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演劇集団キャラメルボックス2011ハーフタイムシアター『ヒア・カムズ・ザ・サン』『水平線の歩き方』 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスのハーフタイムシアター『ヒア・カムズ・ザ・サン』と『水平線の歩き方』夜の回を観に行って来ました。
本日で千秋楽のためネタバレしてます。

『ヒア・カムズ・ザ・サン』
真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた……。

『水平線の歩き方』
幸一は35歳。社会人ラグビーの選手。
ある夜、自分のアパートに帰ると、部屋の中に女がいた。どこかで見た顔。彼女はアサミと名乗った。
それは、幸一が小学6年の時に病気で亡くなった、母だった。親子二人で過ごした日々が、幸一の脳裏に鮮やかに蘇る。
あの頃、母は大人に見えた。
が、今、目の前にいる母は、明らかに自分より年下だった……。
(公式サイトより)

『ヒア・カムズ・ザ・サン』
ビートルズの楽曲のタイトルで、意味は「陽はまた昇る」。
この時勢にぴったりですね。
公式サイトであらすじとキャスティングを見たときに「もしかしてカオルって……?」と思っていたら、やはり3年前に上演された作品『ハックルベリーにさよならを』に登場したカオルさんと同一人物でした。(その時の感想記事はこちら。この時同時に上演されたのが『水平線の歩き方』でした。)設定ではあれから2年後、という事になっています。
カオルの父・白石はカオルの会社を訪れ真也と出会いました。"チョイ悪"な風貌と口調の白石ですが、夢を追い続け努力を惜しまない実直な人物だというのがわかります。家族を捨てアメリカへ旅立った彼が何故急に帰って来たのか。出されたお茶を2度もひっくり返し零してしまった事、極度の近眼に加えて老眼だと言うにも関わらず、帰国前に割れたメガネをそのままにしていた事、歩いている時の目つきや身振りから、「もしかして近眼どころの話じゃないのでは?」と思っていたら正にその通りで、彼は目の病気で視力を失いかけていたのです。そこで、何故急に帰国しカオルや元妻の輝子に会いに来たのかを想像すると切なくてたまりません。
たとえ視力を失っても、映画に携わる仲間を支える仕事に就くべく努力を続ける姿、愛する2人の顔を最後に目に焼き付けておきたいという想い、それでいて堂々とした立ち振る舞いや、カオルに会いたいと真也を振り回す憎めないワガママさに惹きつけられました。
そして、真也の持つ能力を知り半信半疑ながらも、「父が何故急に帰って来たのかその力で探って欲しい」と頼むカオル。白石の持ち物から真也が見たものは、映画の現場とはまるで関係ない光景でした。「映画の仕事をしているというのは嘘なのではないか?」と詰め寄った真也に対し、「お前は神様にでもなったつもりか?」「お前が見たものが真実だなんてどうして言い切れるんだ」と白石は返します。真也同様にはっとさせられる言葉でした。
特殊能力の有無に関わらず、人は自分の見たものが正しいと思い込んでしまいがちです。それはごく一部かもしれない、他の見方があるかもしれない、そう考えるきっかけを得る事ってなかなか難しい事だと思います。こういう事を臆せずに心を開いて言い合える関係が作れたら素敵な事だと思いました。これをきっかけに真也と白石の互いの気持ちが「好きな人の父親・娘の恋人」でなく、「対等に語り合える男」に変わったように思います。
そしてどうにかカオルと白石を会わせようと奔走する真也の優しさにジーンとしました。カオルに頼まれたから、とか好きな人の父親だから、といった打算めいた想いは一切無く、自分の身体を省みずに力を使い走る真也の一途な姿が魅力的です。
ようやく叶ったカオルと白石の再会。淋しかった気持ちや再会を喜ぶ想いを隠し意地を張るカオルと「目の事は絶対に話すな」と言う白石に何だか似たもの親子だなぁと感じます。そんなカオルが最後にようやく見せた笑顔にジーンとなりました。
帰国してから関わった人達皆に(真也と真也の家族、カオルと輝子、真也の会社の人達までも!)見送られ成田を発った白石は、この後視力を失ってもきっと希望を持って生きていけるだろうなと思えました。
ラストシーンで真也とカオルの繋いだ手にスポットが当たっていたのも印象的でした。2人の今後も見てみたいです。
主人公は真也ですが、白石がおいしい所を持ってちゃったようにも感じたので、是非他の作品でも真也の奔走ぶりを見たいです。

『水平線の歩き方』
キャラメルボックスにハマったきっかけになった作品で、今まで観た中で一番好きな作品です。
ダンスシーンの曲を聴いただけで涙が出てきます。
初演の時よりも、幸一の周囲の人達が彼を思う気持ちを強く感じました。だからこそ余計に、独りで生きていこうとする幸一の姿が切なくて悲しくてたまりません。12歳で母を亡くして父には捨てられて、独りで突っ走り「誰にも迷惑をかけたくない。」、「どんなに好きなっても、いつかなくしてしまうかもしれないと思うと怖くて心から誰にも頼れない。」と想いを吐露する姿、そして幸一が今の自分の状況を思い出した時に「もう思い残す事は無い」と言った瞬間とそれに対してアサミが返した言葉に涙腺崩壊しました。
母を亡くして以来、家族にも友人にも恋人にも溶かせなかった頑なな幸一の心を溶かしたのは、やっぱり厳しくも優しい母の愛なんですね。
ドアを開けて出て行く直前のアサミの言葉と表情、そして一人になった幸一が母の作って行ったおじやを食べて見せた笑顔、たまらなく素敵で涙が止まりませんでした。
泣き所だけじゃなく笑い所も満載で、お腹痛くなるほど笑ったシーンもたくさんあり、最高に楽しませてもらいました。

2つの作品に共通する「人は一人じゃ幸せになれない」という言葉と、今回の公演の「人が生きていくのに必要なのは、食べ物と友達。そして、思い出なんじゃないかな。」というキャッチコピーが心に響きます。
思い出は過去を振り返り懐かしむだけのものじゃなくて、今を生きる力を与えてくれるものなんだと感じました。
笑いと大きな感動をもらえた素敵な舞台でした。

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演劇集団キャラメルボックス緊急公演Vol1『賢治島探検記』 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスの緊急公演『賢治島探検記』を観に行ってきました。

ある大学の文学部のゼミの一行が、街の片隅の、小さな空き地へやってくる。
ゼミを率いる坂口教授は、「ここが賢治島だ」と主張する。
教授は自説を証明するために、学生たちと、宮沢賢治の童話を芝居として上演する。
3つの芝居が終わった時、彼らの胸に、不思議な風が吹く。

緊急公演についてはこちらをご覧下さい。
この作品は、阪神淡路大震災の経験から「路上でも出来る芝居」を目的に作られたものだそうです。

前説が終わると、暗転する事無く舞台が始まります。
「ここが賢治島だ」と主張する坂口教授に訝しげな顔をする1人の学生・畑中君。
そして始まる宮沢賢治作品の劇中劇。
まだ公演は始まったばかりなので詳しい事は書けませんが、歌や演奏もあり、舞台と客席、役者さんと観客の一体感を強く感じられた楽しい舞台でした。演じている役者さん達も、この作品を楽しんでいるのが伝わってきます。
劇中で演じられる宮沢賢治作品は3つ。『どんぐりと山猫』or『注文の多い料理店』(日替わり)、『セロ弾きのゴーシュ』、『銀河鉄道の夜』。これらの作品を元にキャラメルボックスらしい演出が加えられた劇中劇が繰り広げられます。元になった賢治作品を知っているとより一層楽しめると思います。
私も宮沢賢治、特に『銀河鉄道の夜』は大好きな作品で、以前にもこちらの記事で書いた大好きな言葉や登場人物達のやり取りが、大好きな役者さん達の口から発せられるのを聞けたのが嬉しくて、そしてその言葉に込められた宮沢賢治や役者さん達の想いに涙が滲みました。

たとえ架空の世界でも、自分が信じ心動かされたものは紛う事のない真実。
賢治島を求める彼らの探検はこれからも続いていくようです。
その内にもしかしたら、「冗談じゃない、ここは太宰島だ!」と主張する人も出てくるかもしれません。でもそれもまた真実なのでしょう。
パンフレットにあった「そこに真実があるから。」という演出家・成井豊さんの言葉が胸に響きます。

舞台や役者さんとの距離をとても近く感じました。決して最前列の席だったという事だけではありません。
役者さんとの一体感を感じられたとても素敵な舞台でした。





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演劇集団キャラメルボックス2011スプリングツアー『夏への扉』 2回目 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスの公演『夏への扉』お昼の回を観に行ってきました。

1970年、ダニエル・デイビスは失意のどん底にいた。
大学で機械工学を学んだダニエルは、親友と二人で会社を設立。ハイヤード・ガールと名付けたロボットの開発に成功した。が、婚約中の恋人と親友が仕組んだ罠に嵌められ、会社とロボットを奪われたのだ。ダニエルに残されたのは、飼い猫のピートだけ……。
彼は裏切り者二人への復讐を誓うが、逆に捕らわれの身となり、コールドスリープの冷凍場に送られてしまう。そして、長い眠りから覚めた時、そこは30年後の、2000年だった!会社は?ロボットは?そして、愛猫ピートは?すべてを失ったダニエルは、起死回生の一手を打つ!

信頼していた友・マイルズと恋人・ベルの裏切りに合い、失意の底から立ち上がって復讐を試みるも失敗。全てを失った状態から、立ち上がり走り抜ける畑中智行さん演ずるダニエルの姿に勇気と元気を貰えます。
2000年に目覚めたダニエルを支え助ける人々、ダニエルの心の支えとなっていたマイルズの(義理の)娘・リッキー。悲劇や絶望に打ちひしがれても、人は1人じゃないのだと教えてくれます。

心根からの悪人にはなりきれなかった感のあるマイルズに対し、ベルの徹底した悪女っぷりにぞぞっとします。興奮するダニエルに注射を打って眠らせる手際の良さ、理知的なマイルズすらも手玉に取る魔性ぶり、頭の回転の早さは自分の目的を果たすためと危機を回避するためだけに働き、自分に反発する者は猫であろうと容赦しない非道さetcetc
ここまでの悪人は今までのキャラメルの舞台には存在しなかっただろうなと思います。ベルを演じた岡田さつきさん、お見事でした。
ダニエルから発明品のロボットに会社にと全てを奪ったベルですが、2000年に再会した彼女はすっかり落ちぶれていました。悪人には相応の未来が待っているという展開も安心して観ていられます。

ダニエルの愛猫・ピートも当然役者さんが演じています。
"尋常じゃなくデカイ猫(笑)"筒井俊作さんが演じるピートは、猫の着ぐるみやネコミミなんかを付けてるわけじゃないのですが、巨大なボストンバッグから顔を出す仕草やベル達との闘争など、全ての所作が猫のそれっぽく見えて、愛らしく頼もしい素敵な猫でした。

1970年から2000年、そして再び1970年へと、舞台上の時間は複雑に進みます。
奪われた全てを取り戻すために、そして幼かったリッキーとの大切な約束を果たすために、諦めず走り続けたダニエルの姿に惹きつけられました。信じていた人物に騙され失意のどん底にいたのに、それでも人を信じられるダニエルの強さに憧れます。そんな彼の強さが、回りの心を動かし協力したいと思わせるのだと思いました。

喪失からの起死回生、困難に立ち向かう事、人を信じる心。今の状況に相応しい、生きるエネルギーを貰える舞台でした。

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演劇集団キャラメルボックス2011スプリングツアー『夏への扉』 [観劇]

5日の夜、演劇集団キャラメルボックスのスプリングツアー『夏への扉』を観に行ってきました^^

1970年、ダニエル・デイビスは失意のどん底にいた。
大学で機械工学を学んだダニエルは、親友と二人で会社を設立。ハイヤード・ガールと名付けたロボットの開発に成功した。が、婚約中の恋人と親友が仕組んだ罠に嵌められ、会社とロボットを奪われたのだ。ダニエルに残されたのは、飼い猫のピートだけ……。彼は裏切り者二人への復讐を誓うが、逆に捕らわれの身となり、コールドスリープの冷凍場に送られてしまう。そして、長い眠りから覚めた時、そこは30年後の、2000年だった!会社は?ロボットは?そして、愛猫ピートは?すべてを失ったダニエルは、起死回生の一手を打つ!

まだ東京公演が開いたばかりなので、詳細な感想は後日改めるとしまして。
ハイテンポで進む謎を帯びたストーリー、目まぐるしく変わる状況に惹き付けられた2時間でした!
親友と婚約者に裏切られ、失ったものを取り戻すべく奔走するダニエルの前向きさがとっても魅力的です。
「尋常じゃないデカさ」の猫・ピートも時に愛らしく時にかっこよくて素敵でしたし、ダニエルを裏切ったベルの見事な悪女っぷりにはぞわっとさせられました。

どんな状況に陥っても希望を失わないダニエルの姿に元気をもらえます。

今回の舞台は権利の関係で映像化されません。
是非たくさんの方に、生で観て目と心に焼き付けて頂きたい舞台です。


余談ですが、今回の公演は銀座にある「ル・テアトル銀座」という劇場。
私にとって銀座は全く馴染みの無い街なので、早目に行って劇場の場所も確認しておこうと、最寄の銀座一丁目駅に着いたのは17時過ぎ。
劇場は駅のほぼ目の前、いくらなんでも早く着きすぎたようです。
開場まで1時間弱、時間潰しにぶらぶらしていたのですが……Cartier、BVLGARI、TIFFANY……etcetc、建ち並ぶ高級ブランドショップ。私など完全に場違い、お呼びじゃない……。
劇場近くにドトールコーヒーを発見してホッとした庶民でした(苦笑)
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演劇集団キャラメルボックス25thXmasツアー『サンタクロースが歌ってくれた』 観劇 [観劇]

先週9日、演劇集団キャラメルボックスの公演『サンタクロースが歌ってくれた』通称Aチームの舞台を観てきました。

クリスマスイブの東京。彼氏のいない「ゆきみ」は、池袋の映画館で友人の「すずこ」と待ち合わせ。
しかし、「すずこ」が約束の時間に来なかったため、一人で中へ。映画のタイトルは『ハイカラ探偵物語』。
大正5年、芥川龍之介と平井太郎(後の江戸川乱歩)が怪盗黒蜥蜴と戦う話だった。ところが、 芥川が黒蜥蜴を追い詰めた場面で、黒蜥蜴が消失! どうやら、映画の外に逃げたらしい。芥川と太郎、そして警視庁の菊池警部は、黒蜥蜴を追って、映画の外に飛び出す。そして、「ゆきみ」に現代の東京の案内を頼む。
一方、「すずこ」が遅刻して映画館に辿り着くと、中からメイド服の女が飛び出してきた。 彼女は、映画の中から逃げてきたと言う……。
(公式サイトより)

同じ脚本で同じ人が演出しているのに、演じる役者さんが違うだけでこんなにも変わるものかと驚きました!
どちらがどうと比べる事はできません。台詞の響き方も笑わせ方もそれぞれのチーム独自の色が出ていて、どちらも凄く楽しかったです。
Bチームの方が、「すずこの芥川を演じた俳優評」が手厳しかった気がします^^;

ボケ倒してやりたい放題の近江屋太朗さん(菊池警部)と、光速でツッコんで何とか話を本筋へ戻そうとする上川隆也さん(平井太郎)のやりとりが面白すぎて、お腹痛くなるほど笑わせてもらいました!
もっと早くキャラメルを知って、劇団員だった頃のお2人を観たかったと思います。

芥川竜之介と平井太郎(江戸川乱歩)、現実には出会うことの無かった両者がもし出会っていたら、という想定で作られたこの映画『ハイカラ探偵物語』は、役に込められた魂によって脚本とは違うストーリーが登場人物達の手によって秘かに出来上がっていきます。
後の江戸川乱歩である彼はこの頃(大正5年)まだ駆け出しの作家。対して芥川は夏目漱石の弟子として注目される新進気鋭の作家。現実世界の人間の手によって友人という立場にされた2人。映画で平井太郎を演じた俳優は言います。

「本当に2人が出会っていたなら、友達になんかなれるはずがない。」

男の友情をテーマに掲げた『ハイカラ探偵物語』ですが、作中の登場人物の思いは違う所にある……。太郎の思惑と彼に心を寄せ協力したミツの想い、何も知らずにいた芥川の動揺、胸が痛みます。
演じた平井太郎の気持ちを思い返し、「あなたを憎んだんじゃない、あなたの才能を憎んだんだ」と芥川に言った苦しそうな言葉はどっちのチームでもずきんと響きました。
そして、水面下で太郎のシナリオが進められる中、映画は脚本通りの結末を迎えています。
何度も上映される内に、「自分は太郎の思惑の道具にされただけなんじゃないだろうか」と苦悩し、太郎の本心を知りたいとスクリーンを飛び出し奔走するミツの姿も惹き付けられます。メイド服を着ているので黒一色のワンピース姿なのが、余計に彼女の苦悩と孤独を際立たせているようでした。

クライマックスの屋上のシーンも両チームとも胸を打たれました。
太郎は「芥川は自分を許さないだろう」と、映画の世界には戻らず消える覚悟でいます。しかし騙されて続けていた芥川は太郎の苦悩を理解し彼を友人だと言う、2人の叫びに心打たれました。

この日のカーテンコールも大盛り上がりでした。
最初の挨拶は前田綾さん。元気はつらつハイテンションな挨拶が楽しいです^^こんなお姉さんが欲しいですね♪絶対毎日楽しいと思う。
2回目は西川さん。「僕達はいつでもここにいます。」西川さんが出演されている時は、これを聞かないとキャラメルの舞台を観た気がしませんね^^
まだまだ鳴り止まない拍手で3回目は大森みきこさん。キャラメル旗揚げメンバーで舞台に立ち続けている大森さんの存在感、観劇歴の浅い私でもその大きさを感じます☆
そして満を持して近江谷太朗さん。「とっても感謝している気持ちとは裏腹にこんな事を言わなきゃいけないのは心が痛いのですが……」と前置きして、「とっとと帰って下さい!」
会場は大喜び!伝説(?)の挨拶が聞けて私も嬉しいです!

いつもは「まだ若干、お席に余裕が……」と言われるのですが、この公演のチケットは前売り券完売!
平日昼間にも関わらず、当日券で補助席も出て超満員の会場でした。

ちょっと早いですがとっても素敵なクリスマスを過ごせました♪

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演劇集団キャラメルボックス25thXmasツアー『サンタクロースが歌ってくれた』10Days Limited Version [観劇]

今日は演劇集団キャラメルボックスの公演『サンタクロースが歌ってくれた』を観に行ってきました.
今日の公演は「10Days Limited Verion」と銘打たれた、キャスト総入れ替えの東京限定公演です。

クリスマスイブの東京。彼氏のいない「ゆきみ」は、池袋の映画館で友人の「すずこ」と待ち合わせ。
しかし、「すずこ」が約束の時間に来なかったため、一人で中へ。映画のタイトルは『ハイカラ探偵物語』。
大正5年、芥川龍之介と平井太郎(後の江戸川乱歩)が怪盗黒蜥蜴と戦う話だった。ところが、 芥川が黒蜥蜴を追い詰めた場面で、黒蜥蜴が消失! どうやら、映画の外に逃げたらしい。芥川と太郎、そして警視庁の菊池警部は、黒蜥蜴を追って、映画の外に飛び出す。そして、「ゆきみ」に現代の東京の案内を頼む。
一方、「すずこ」が遅刻して映画館に辿り着くと、中からメイド服の女が飛び出してきた。 彼女は、映画の中から逃げてきたと言う……。
(公式サイトより)


初のサンシャイン劇場2階席だったのですが、傾斜がけっこうあり思った以上に見やすかったです。
前説に加藤さんと新人の小笠原利弥さんが登場。実は加藤さんと新人さんの前説、というのも初体験でした。
以前はよくあったそうですね。初々しい小笠原さんの初舞台は来年春。楽しみです!
劇団内デュオ・ペリクリーズも登場しお約束の展開と美声を楽しませてくれました!

そして開幕。
スクリーンから登場人物が飛び出してくる、というファンタジックな設定ですが、舞台という特性を活かした作りになっていてすぐに惹き込まれました。
既に大阪・北九州での公演を終えてきた通称「Aチーム」の公演がこれからなので、詳細な感想は先送りにしまして。
前公演『シラノ・ド・ベルジュラック』で主演を勤めた阿部丈二さん演じる菊池警部が弾けまくってます!
大正時代初期の人物という映画内の設定そのままに銀幕から飛び出してきた彼ら。現実世界に飛び出してきても、現代の東京の事など何もわからない。そこから巻き起こる騒動に涙が滲むほど笑わせてもらいました!
芥川の大内厚雄さんと太郎の岡田達也さんのやり取りも楽しくて、そして終盤にかけて明らかになる太郎、芥川のそれぞれが抱えた苦悩や葛藤、互いへの想いにジーンとしました。
お二人とも夏の公演でそれぞれ坂本竜馬を演じ、その時の「導く人」という役柄もかっこよかったですが、今作のような葛藤する人物もとっても魅力的です。
最後の芥川の台詞、聞いた瞬間には「?」だったのですが、すぐ「あぁ、あそこと繋がってこの台詞か!」と気付いてまたジーンとしました。

大盛り上がりでカーテンコールは4回。
4回目に舞台に登場した岡田達也さんの言葉に噴き出しちゃいました。
お疲れの所何度もお呼びたてしてスミマセン(笑)
ハイテンションな阿部さんの最初の挨拶や、何故か全く関係なさ過ぎる事を話し出す大内さんと共演者のリアクションにも大ウケでした!

「Aチーム」とは、"同じ脚本なのに全然違うものに仕上がってる"との事。両チームがどんな違いを見せてくれるのか今から楽しみです。
まずは今日の通称「Bチーム」の舞台、本当に楽しかったです!
東京でしか観られませんし、BチームはDVD化もされないそうですので、是非劇場で観て頂きたい公演です!

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演劇集団キャラメルボックス25th『シラノ・ド・ベルジュラック』 成井豊の世界名作劇場 [観劇]

6日の夜に演劇集団キャラメルボックスの公演『シラノ・ド・ベルジュラック』を観てきました。
(ややネタバレあり注意)

1640年のパリ。
ガスコン青年隊のシラノ・ド・ベルジュラックは、剣士であると同時に詩人でもあり理学者でもある、男の中の男。
ただ一つの欠点は、生まれながらの巨大な鼻で、従妹のロクサーヌに恋い焦がれながらも、自分のような醜い男が愛されるわけないと諦めている。
ある日、青年隊にクリスチャンという男が入隊してくる。クリスチャンはロクサーヌに一目惚れして、シラノに仲介を頼んでくる。
シラノは恋文の代筆を引き受け、ロクサーヌに寄せる熱い想いを、思う存分書き殴る。
そして……。
(公式サイトより)


前説が始まる前の舞台が面白いです。
まるで舞台上に巨大な鏡が置かれているかのよう。

この作品は、1897年に初演されたエドモン・ロスタンという劇作家が書いた戯曲で、主人公・シラノは実在の人物だそうです。
古典劇なのでやはり台詞が難しく、何が起きているのかとか登場人物の関係を把握するのに時間がかかってしまいました。けれど把握できると俄然面白くなってきます。
私が何より惹かれたのは苦悩するクリスチャンでした。
愛を語る言葉を持たないクリスチャンと、女性に好かれる美しい容姿を持たないシラノ。恋文の代筆をするシラノは自分の想いのままにロクサーヌへの愛を語ります。それはあくまでも詩人として綴ったのだのだと言い張るシラノですが、クリスチャンはそこに込められた想いが本物だと気付き、そしてロクサーヌは「美しい言葉を語るクリスチャンは、容姿だけでなく魂も美しい」と信じ惚れ込みます。
無事結ばれた2人ですが、「あの言葉は自分の言葉ではない。本当に愛されているのは自分自身なのか?」と苦しむクリスチャンが切ないです。そしてロクサーヌは、苦悩するクリスチャンを前に「今はあなたの容姿ではなく、美しいその心を愛している」と告げてしまいます。絶望するクリスチャンに、「愛されているのはお前だ」と懸命に言うシラノの姿もまた切なくて胸が痛みました。
何も知らずにはしゃぐロクサーヌの天然ぶりにちょっとイラッとしてしまいました。
余談ですが、そんなロクサーヌを見ていて『タッチ』の浅倉南を思い出したのは私だけでしょうか。才女でモテる、そして男達の苦悩に何も気付かない辺り似ている気がします。

歌あり演奏ありでこれも楽しいです。
これまでにも劇中で歌や楽器が演奏された事はありますが、ここまでがっつり取り入れてるのは初めてじゃないでしょうか?
歌や楽器の上手い芸達者な役者さんも多く、プロの歌手に負けない歌声と演奏に魅了されました。

コンプレックスを抱えながらも、ユーモアと男気に溢れ、多くの人に慕われ、後ろ盾を持つ事を望まず心のままに生きたシラノ。
彼の生き様が詰まったラストシーンは胸が熱くなります。

愛って何だろう、人の美しさって何だろう、色々考えさせられます。
笑いあり涙あり、とっても素敵な舞台でした。
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劇団PEOPLE PURPLE『THE OLD CLOCK』 観劇 [観劇]

昨日は劇団ピープルパープルの公演『THE OLD CLOCK』を観てきました。
(ネタバレあり注意)

時は1874年。
舞台はロンドン郊外にあるジョージホテル。
その頃作曲家ヘンリーはたまたま立ち寄ったこのホテルで、大きな大きな古時計に出会う。
支配人の老婆に時計の事を尋ねると、老婆はゆっくりと話し始めた。

時計とお爺さん。二人の秘密の物語。

お爺さんが生まれた時にやって来て、お爺さんが亡くなった時に止まってしまった時計。
時には喧嘩し、時には手をとり笑い合った100年間。
別れの時まで、共に歩き、共に泣いたエピソード。

話を聞き終えたヘンリーは、楽譜を取り出し曲を書き始めた……。
(公式サイトより)


平井堅さんもカバーしてヒットしたアメリカの童謡『大きな古時計』が生まれた経緯を語った物語です。
事実半分、創作半分で描かれた心温まるファンタジーでした。

おじいさんの名前はスティーブ。スティーブが生まれた時、ジョージホテルのオーナーである父は、大きな柱時計を購入します。そこには、森の木に住んでいたフェアリーが宿っていました。彼女の名はアリンシア。そして時計だけではなく、ホテルにある古いソファやピアノ、小さなタンス、ロビーのカウンターデスクにもフェアリーが宿っていて、彼らは「こっそりと人を喜ばせ幸せにするのが仕事」だと言います。
生まれたばかりのアリンシアはホテルの他のフェアリー達、そして幼いスティーブと触れ合い、スティーブの事が大好きになります。スティーブもフェアリー達、中でも姉のようなアリンシアを慕います。楽器演奏や星座語り、チェスなどなど、純真無垢なフェアリー達と幼いスティーブの交流はとても優しさに満ちていて心温まります。
惹かれ合うスティーブとアリンシアですが、歳を取らないフェアリーと人間のスティーブ。大人になってもスティーブは変わらずアリンシア達と触れ合う事はできますが、歳を取っていくスティーブに寂しさを感じ「どこにも行かないで」と言うアリンシアの姿に胸が痛みました。

スティーブと家族や使用人達との愛情や絆も心打たれます。
離れていても心は繋がっている、反発してもその底には信頼や愛情がある事が伝わってきます。
「愛してる」「あなたを誇りに思う」そうストレートに言える関係って素敵だなと感じました。
そしてある経緯からジョージホテルの従業員になった少女・ウィンスレット。彼女は行く宛てのない自分を雇ってくれたスティーブに恩を感じ、倍以上歳の離れたスティーブに恋心を抱きます。けれど、彼の心にはアリンシアがいる。アリンシアの存在を聞かされ(といってもウィンスレットには見えないのですが)、その時の幸せそうなスティーブの表情に、アリンシアの存在を信じ自分の想いを抑え続けたウィンスレットの笑顔が切ないです。

やがて母メアリーが他界し、幼い頃から家族同然に接してきた使用人のリッチー、そして歳の離れた弟のリチャードまでもが先立ち、孤独なスティーブを救おうと必死なアリンシアとウィンスレットの一途さに涙が滲みます。スティーブの心を救う為に自分の力を分け与え右手の自由を失ったアリンシア、年老いて足腰が立たなくなってもアリンシアのいる時計を磨く事を日課にするスティーブ、2人の絆の強さに胸を打たれました。

そしてスティーブが100歳になった時、アリンシアとの別れが訪れます。
最後にとスティーブはフェアリー達にパッヘルベルのカノンの演奏を頼みます。スティーブのためだけの演奏会、フェアリー達と光に包まれ、涙ぐむアリンシアに寄り添われたスティーブの幸せそうな最期の笑み、「私もスティーブと一緒に天国へ行く」というアリンシアの願い、そして息絶えるスティーブを見つけ泣き崩れるウィンスレットにもフェアリーのカノンの演奏が聞こえる、この一連のシーン全てに涙が溢れて止まりませんでした。

老婆(年老いたウィンスレット)の話を聞き終えたヘンリーはホテルのピアノに向かい一晩で曲を書き上げました。
その歌詞に込められた優しさに涙が滲みます。

感動だけでなく笑い所も満載で、フェアリー達の無邪気な言動や、スティーブを取り巻く人々の騒動、語り手である老ウィンスレットとヘンリーのコントのようなやり取りに涙が滲むほど笑わせてもらいました。

愛と優しさに満ちた温かい物語で、「ずっとこの空間にいたい」、そんな気にさせてくれる素敵な舞台でした。

終演後に座席でアンケートを書いていると、フェアリー達が舞台に登場し「大きな古時計」を演奏してくれました。素敵な計らいに感激しました。
すっかり劇団ピープルパープルのファンになりました。


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演劇集団キャラメルボックス25thサマーツアー『また逢おうと竜馬は言った』海組観劇 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスの公演『また逢おうと竜馬は言った』海組の公演を観てきました。

ストーリーは2つ下の記事の空組と同じなので、あらすじと細かい感想ははしょりまして。

ダブルキャストの竜馬と岡本。空組の竜馬(岡田達也さん)は頼れる熱いアニキといった感じで、岡本(左東広之さん)を叱咤激励しながら導いていく、運動部の先輩後輩という雰囲気だったのに対し、海組の竜馬(大内厚雄さん)はクールにどっしりと構え、後ろから叱咤しながら岡本(畑中智行さん)を見守ってる、こちらの2人は監督と選手という雰囲気を感じました。どちらの竜馬もかっこよかったです!
そして、空組の岡本の方が序盤の頼りない印象が強くて、終盤の凛とした表情とのギャップが素敵です。海組の岡本も頼り無さそうな雰囲気はありますが、優しいが故の頼りなさ、といった感じがして、どちらもとっても魅力的でした。
自分の気持ちを抑え、大事な人のために危険に立ち向かう、こんなに強く優しい男性はなかなかいないだろうなと思います。

他の役者さんも空組と海組では少し雰囲気が違っていて、空組は笑い所満載で一直線に楽しませてくれた後、終盤でジーンと魅せるという感じ、海組は笑い所もたくさんありつつ、要所要所でジーンと泣き所で魅せながらクライマックスへ向かっていく、という感じで、同じストーリーなのに全く違う色合いの舞台を楽しめました。

また、この日はケイコを演じた岡内美貴子さんの通算1500回目のステージでした。
カーテンコールで挨拶し、感極まる岡内さんにもらい泣きしちゃいました。
「お芝居が好き」っていうだけでは絶対続けられない世界。たくさんの人に愛され期待され、その想いに応えてきた岡内さんの姿はとても凛々しく綺麗でした。
記念すべきステージを、役者さんや他のお客さんみんなと劇場でお祝いできて嬉しいです。
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G-Up presents 『猿』 観劇 [観劇]

今日はザムザ阿佐ヶ谷で上演されているG-Upの舞台『猿』を観てきました。
元キャラメルボックスの細見大輔さんや、扉座の有馬自由さんが出演されています。

全てこの世は猿芝居
男は無様に哭き喚き
女は無惨に狂い咲く
回し回され猿芝居
(パンフレットより)

舞台は戦時中の昭和、悩める文豪達と彼らを取り巻く女達の物語です。
愛人・時江と心中未遂を起こした文豪・手塚、その妻・沙紀、書けなくなったと嘆いてみせる泉、編集者の仁科、彼らを中心にドロドロした深く悲しい物語が展開されます。
手塚の心中未遂の動機と、その後の時江と沙紀。いつの時代でも、したたかで怖いのは女の方なのかもしれません。

また、時江が経営する酒場で暮らすまるで童女のような女性・ツネ子と、彼女を時江の店に連れて来た新聞社社長の高岡、この2人の姿が切ないです。
店に集う文豪達はツネ子を「天使」だといいます。最初は男の都合のいい幻想のように聞こえたのですが(どういう事なのかは……お察し下さい。)、高岡が彼女を店に連れて来た経緯と彼らの関係が明らかになると、「天使」という表現は幻想ではなくなり、ツネ子の存在感を的確に表すものとなります。
「ツネ子に捕われている」と言われた高岡ですが、ある意味ではそれも幸福なのかもしれません。

どんな時代であれ、生きる事は寂しく辛い、それらを忘れるべく入り乱れる感情や言葉、欲望。哭き喚き、狂い咲く、猿芝居のような滑稽な生き様、だけどだからこそ切ない、そんな物悲しい気分に包まれます。
ラストシーンは、そんな中でも清らかな輝きを放つツネ子の姿が印象的でした。

タグ:演劇 G-up
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