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劇団PEOPLE PURPLE『THE OLD CLOCK』 観劇 [観劇]

昨日は劇団ピープルパープルの公演『THE OLD CLOCK』を観てきました。
(ネタバレあり注意)

時は1874年。
舞台はロンドン郊外にあるジョージホテル。
その頃作曲家ヘンリーはたまたま立ち寄ったこのホテルで、大きな大きな古時計に出会う。
支配人の老婆に時計の事を尋ねると、老婆はゆっくりと話し始めた。

時計とお爺さん。二人の秘密の物語。

お爺さんが生まれた時にやって来て、お爺さんが亡くなった時に止まってしまった時計。
時には喧嘩し、時には手をとり笑い合った100年間。
別れの時まで、共に歩き、共に泣いたエピソード。

話を聞き終えたヘンリーは、楽譜を取り出し曲を書き始めた……。
(公式サイトより)


平井堅さんもカバーしてヒットしたアメリカの童謡『大きな古時計』が生まれた経緯を語った物語です。
事実半分、創作半分で描かれた心温まるファンタジーでした。

おじいさんの名前はスティーブ。スティーブが生まれた時、ジョージホテルのオーナーである父は、大きな柱時計を購入します。そこには、森の木に住んでいたフェアリーが宿っていました。彼女の名はアリンシア。そして時計だけではなく、ホテルにある古いソファやピアノ、小さなタンス、ロビーのカウンターデスクにもフェアリーが宿っていて、彼らは「こっそりと人を喜ばせ幸せにするのが仕事」だと言います。
生まれたばかりのアリンシアはホテルの他のフェアリー達、そして幼いスティーブと触れ合い、スティーブの事が大好きになります。スティーブもフェアリー達、中でも姉のようなアリンシアを慕います。楽器演奏や星座語り、チェスなどなど、純真無垢なフェアリー達と幼いスティーブの交流はとても優しさに満ちていて心温まります。
惹かれ合うスティーブとアリンシアですが、歳を取らないフェアリーと人間のスティーブ。大人になってもスティーブは変わらずアリンシア達と触れ合う事はできますが、歳を取っていくスティーブに寂しさを感じ「どこにも行かないで」と言うアリンシアの姿に胸が痛みました。

スティーブと家族や使用人達との愛情や絆も心打たれます。
離れていても心は繋がっている、反発してもその底には信頼や愛情がある事が伝わってきます。
「愛してる」「あなたを誇りに思う」そうストレートに言える関係って素敵だなと感じました。
そしてある経緯からジョージホテルの従業員になった少女・ウィンスレット。彼女は行く宛てのない自分を雇ってくれたスティーブに恩を感じ、倍以上歳の離れたスティーブに恋心を抱きます。けれど、彼の心にはアリンシアがいる。アリンシアの存在を聞かされ(といってもウィンスレットには見えないのですが)、その時の幸せそうなスティーブの表情に、アリンシアの存在を信じ自分の想いを抑え続けたウィンスレットの笑顔が切ないです。

やがて母メアリーが他界し、幼い頃から家族同然に接してきた使用人のリッチー、そして歳の離れた弟のリチャードまでもが先立ち、孤独なスティーブを救おうと必死なアリンシアとウィンスレットの一途さに涙が滲みます。スティーブの心を救う為に自分の力を分け与え右手の自由を失ったアリンシア、年老いて足腰が立たなくなってもアリンシアのいる時計を磨く事を日課にするスティーブ、2人の絆の強さに胸を打たれました。

そしてスティーブが100歳になった時、アリンシアとの別れが訪れます。
最後にとスティーブはフェアリー達にパッヘルベルのカノンの演奏を頼みます。スティーブのためだけの演奏会、フェアリー達と光に包まれ、涙ぐむアリンシアに寄り添われたスティーブの幸せそうな最期の笑み、「私もスティーブと一緒に天国へ行く」というアリンシアの願い、そして息絶えるスティーブを見つけ泣き崩れるウィンスレットにもフェアリーのカノンの演奏が聞こえる、この一連のシーン全てに涙が溢れて止まりませんでした。

老婆(年老いたウィンスレット)の話を聞き終えたヘンリーはホテルのピアノに向かい一晩で曲を書き上げました。
その歌詞に込められた優しさに涙が滲みます。

感動だけでなく笑い所も満載で、フェアリー達の無邪気な言動や、スティーブを取り巻く人々の騒動、語り手である老ウィンスレットとヘンリーのコントのようなやり取りに涙が滲むほど笑わせてもらいました。

愛と優しさに満ちた温かい物語で、「ずっとこの空間にいたい」、そんな気にさせてくれる素敵な舞台でした。

終演後に座席でアンケートを書いていると、フェアリー達が舞台に登場し「大きな古時計」を演奏してくれました。素敵な計らいに感激しました。
すっかり劇団ピープルパープルのファンになりました。


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