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演劇集団キャラメルボックス25thサマーツアー『また逢おうと竜馬は言った』空組観劇 [観劇]

演劇集団キャラメルボックスのサマーツアー『また逢おうと竜馬は言った』お昼の回を観てきました。

ツアーコンダクターなのに、あらゆる乗り物に酔ってしまう男・岡本。彼は坂本竜馬に憧れていて、竜馬のような男になりたいと願っている。しかし、何をやっても失敗ばかりで、とても「男の中の男」にはなれそうもない。
今日も、彼のせいで、同僚・本郷とその妻・ケイコが大喧嘩。ケイコは家を出てしまう。岡本は、なんとか二人の仲を元通りにしようと、愛読書『竜馬がゆく』を片手に奔走する。坂本竜馬に励まされたり、罵倒されたりしながら。
が、ある事件に巻き込まれ、事態は意外な方向へと展開していく……。
(公式サイトより)

序盤から怪しい人物が登場し怒涛の展開、すぐに物語の世界に引き込まれていきます。
ケイコと本郷のケンカを仲裁するため奔走する岡本。失恋失言失敗ばかりで、しょっちゅう床に突っ伏してうな垂れている情けない姿の彼ですが、ある事件に巻き込まれそれに立ち向かいながらも、意地を張り合うケイコと本郷の事を一番に考えて走る姿、竜馬の叱咤激励を受け、その中で男らしい言葉や行動が板につき男らしく成長していく姿にどんどん惹き付けられていきます。
奔走する岡本が心の支えにし、何か起きるごとに対話しアドバイスを受ける存在「竜馬」。竜馬は成長した彼自身の姿の象徴であり、理想の男になった自分をしっかりとイメージできている岡本は、根は強く男らしい人物なんだと思いました。
そして、ケイコと本郷の仲裁のために奔走する岡本はいつしかケイコに惹かれていきます。惚れた女性の笑顔を守る、そんな健気で一途な想いのままに走る岡本の姿と、ラストシーンの凜とした表情がとてもかっこよかったです。

また、岡本達を巻き込んだ"ある事件"の首謀者である男・棟方も、岡本が竜馬を慕うのと同様に、土方歳三を心の師としています。
他人を利用し騙す事も厭わない悪役の棟方ですが、もしかしたら根っからの悪人ではないのかもしれないと感じました。
竜馬同様に舞台上に登場し、棟方を導く土方と竜馬の殺陣も迫力満点です。

「そういう事を面倒臭いと思わないのが夫婦でしょ!?」
「わかってるけど、口に出して言ってほしい」
とても共感したケイコから本郷への台詞です。
改めて言葉に出す事、気持ちを伝える事って必要な事だなって思います。
そして惚れた人の幸せのために、また理想の自分に近づくために、なりふり構わずがむしゃらになるのもカッコイイ生き様だと感じました。

それぞれの登場人物に見せ場もあり、殺陣にアクションに笑い所も盛り沢山、あっという間の2時間でした。


この日は終演後に役者さんによるアフタートークがありました。
裏話や役者さん達の想いなど、興味深い話も聞けて大充実の時間を過ごせました。


この舞台はメインの岡役本と竜馬役がダブルキャストになっており、来週もう1組の岡本と竜馬を観に行きます。
ストーリーは同じでも演じる役者さんによってどう変わるのかも楽しみです。
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劇団TEAM‐ODAC番外公演『宿屋の仇討ち』 [観劇]

今日は劇団TEAM-ODACの番外公演『宿屋の仇討ち』お昼の回を観てきました。

『宿屋の仇討ち』

ある侍が宿屋に泊まった。
静かに休みたいという侍だが、となりの部屋でドンちゃん騒ぎを始める若者達がやってきて・・・

PLAY! Comic Stories. とは?
日本の伝統芸能である落語。
その噺を題材に、第一部に落語家さんをお呼びし、第二部ではオダックらしく同じ噺を現代風にアレンジするという、二部構成の舞台。
一度に二度楽しめる!オダックの企画公演。

◆落語家ゲスト◆  桃月庵 白酒(真打ち)
(公式サイトより)

落語初体験。落語って興味はありつつもなかなか聴きに行く機会がなく、また敷居の高い難しい芸といった印象があったんですが、ゲストの落語家さんは気さくな印象の方で、お話もとてもわかりやすく面白かったです。
舞台装置や小道具、音響など一切無く、落語家さんの話術と身振りだけで魅せる技術に感嘆しました。一人で語り手から何人もの登場人物を瞬時に演じ分ける様、その話術を聴いているうちに宿の部屋の情景までありありと浮かんできます。
江戸時代がお話の舞台ですが、江戸の文化に疎くても問題なく楽しめましたし、江戸時代を生きているはずの登場人物達の話題の中に、W杯や大相撲名古屋場所の問題などタイムリーなニュースが入り込んでいて、それも違和感なく楽しめまて始終笑いっぱなしでした。
『宿屋の仇討ち』は30分弱のお話なのでもう1本別のお話も聴かせてもらえました。こちらは日替わりのようで、今日聴けたのは医師と出来の悪い弟子のお話(題名忘れてしまいました・汗)、こちらも弟子のダメッぷりやそれに振り回される人々の姿が面白くて笑いっぱなしでした。
落語にもはまりそうです。他の演目も聴きに行ってみたいと思います。

第2部の演劇は『ヌーディストな気持ちに』というタイトルが付けられています。
ある宿泊客が「静かな部屋を」とお願いしたにもかかわらず隣室で大騒ぎが始まる、という流れは同じなのですが、共通のキーワードを持ちつつも新たな展開を見せる別の物語になっています。
始めは隣室の騒ぎに苛立っていた彼が、暑苦しくも真っ直ぐな隣室の人物達の騒ぎの展開を聞かされているうちに少し心動かされていきます。そして、病を抱えながら気丈に振舞う宿の女将・佳代にタイトルにある「裸の気持ち」である事の難しさや大事さを語る場面にはジーンとしました。
相手を思うが故の嘘。そんな優しい嘘でも、やっぱりつく方つかれる方どちらも辛いものなんだと感じました。

笑いと感動と、色んなものが詰まった公演でした。
この公演は今日で千秋楽ですが、落語と演劇のコラボ「PLAY! Comic Stories.」は今後も続けていくそうで、また機会があれば行ってみたいと思います。
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『吸血鬼』観劇 [観劇]

今日は細見大輔さんが出演されている舞台、『吸血鬼』を観て来ました。

もしも、あの時、あの街、あの部屋の扉を開けていたら、人生は変わっただろうか――
(公式サイトより)

不可解な死を遂げた広告代理店のOL藤村恭子。元恋人である脚本家・菊池顕は自殺として片が付いた彼女の死に不審を感じ、また仕事に行き詰っていた彼は恭子をモデルに脚本を書こうと考え、彼女の死の真相を追います。彼が辿り着いた結末は……。
タイトルや公式サイトの一文から受けるイメージとは違っていて、人の孤独や心の闇を描いた悲しい余韻の残るお話でした。
またちょっと難しい構成になっていて、一体現実は、真実は何だったのだろうと、観終わった今も色んなシーンや台詞が頭の中をぐるぐるとしています。
全ては主人公の作り上げた妄想だったのかもしれない、全て現実に起きていたのかもしれない、現実は一部だけなのかもしれない、様々な解釈が可能だと思います。
ネタバレになるのであまり書けませんが、終盤の"あの部屋の扉を開けた"シーンが現実なら、どんなにいいだろうと思いました。

タイトルの『吸血鬼』という言葉は登場人物の口から序盤と終盤で2回出てきます。実際に吸血鬼が登場するわけではなく、人の心や生き方の象徴として語られています。
全く異なる意味が語られますが、私は序盤の意味の方になるほどなぁと思いました。
終盤で語られたような思いは私には希薄なので……。
(観てない方には何のこっちゃわかりませんね・汗)

「この脚本を書いた方はどんな人なんだろう?」と思って調べたら、この『吸血鬼』は実際にあった事件をモチーフに作られたとありました。
'97年に起きた"東電OL殺人事件"、私はあまり記憶にありませんがかなりセンセーショナルな事件で、他にもこの事件をモチーフにした作品があるようです。

人は誰もが孤独で、誰かと繋がる事を求めてる―
けれどどんなに心や身体を繋いでも、その繋がりは一瞬のものでしかなく、孤独から完全に逃れる事は叶わないんじゃないだろうか。何だかそんな事を思いました。

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演劇集団キャラメルボックス25th SpringTour『ByeByeBlackbird』(2回目) [観劇]

今日は演劇集団キャラメルボックスの公演『ByeByeBlackbird』を観てきました。
ややネタバレを含みます。ご注意下さい。

2010年6月、世界各地で新種の熱病が流行。その後遺症で、数百万の人々が記憶を失った。
ナツカの場合は、11年分の記憶。その結果、彼女の心は16歳の頃に戻ってしまった。
ナツカは、記憶喪失者が再教育を受ける学校に通い始める。
そこには、他に4人の16歳がいた……。
(公式サイトより)


2回目で色んな事がわかっている分、台詞に無い登場人物の心情を想像でき、より一層感動しました。
「この人は何を思いながらこんな事を言ってるんだろう。」「何を想ってこの人の言葉を聞いているんだろう。」
記憶を失った人達の過去を知っていて、けど様々な事情で全てを話せない、そんな周りの人達の気持ちがより一層伝わってきて胸が痛みます。

スクールに通うナツカを含めた5人の16歳の生徒の内、3人を中心に物語は進んでいきます。
実年齢は47歳で洋食屋を営んでいた安西亮一、都議会議員の父を持つ真鍋充、そして広告デザイナーだった柳瀬ナツカ。
記憶を失った彼らと、彼らを支え共に生きようとする家族。両者のすれ違いは、失った記憶の年数が大きいほど深く深刻な溝となって圧し掛かってきます。
約30年の人生を失った安西の記憶には、妻も息子もいない。16歳までの記憶しかない彼にとって、妻だと名乗る女性は自分より遥かに年上で、20代の息子も見知らぬ青年としか映らない。そんな彼が家族に対して放った「あなた方は赤の他人です。」って言葉にずきんとしました。その後、家族の在り方を淡々と問いたスクールの担任・沢野の言葉が心に沁みます。そして苦悩と奔走の末に彼が選んだ道に涙が滲みました。
そして中盤、家を放り出そうとする安西に憤った息子の由紀人が、その場に居合わせた真鍋に激情に駆られて放った一言が強烈に響いて、物語を急転させます。
自分の過去に何があったのか、父から聞かされた自分の過去は真実なのか。無理に記憶を取り戻そうとするのは、心身に多大な負担がかかるため止められています。それでも必死に自分の過去を辿り奔走した真鍋の不安に満ちた姿、そしてそこで見たもの、両親と対話した彼が自分の過去と父の思惑を知った時の、壊れたような笑い声に胸が痛みます。記憶を失った息子に対してした事が、それまでの人生で息子にし続けてきた事が、間違っていたと語った父親の姿とそれに応える真鍋の言葉にジーンとなりました。
安西の家族と真鍋の家族、両者が辿った道や選んだ道は違うものですが、彼らを見ていて家族の在り方を考えさせられました。
そして真鍋が何気なく言った言葉にフラッシュバック現象を起こしたナツカは、「以前にも誰かに同じ事を言われた」と思い出し、それが誰なのかを探そうとします。自分を励まし後押ししてくれたはずのその言葉を、一体誰が言ったのか。その人は今どこでどうしているのか。大切な人だったはずなのに忘れてしまった悲しみと、思い出せない"彼"を求めるナツカの姿が切なくてたまりません。
真鍋や安西と共に奔走し苦悩し、そして見つけたもの。クライマックスシーンは(2度目でわかっていても)涙が溢れました。
そしてやっぱり、"あの人"は彼との約束を破らない範囲で、できる事をしたかったんだろうなぁと思いました。

記憶は自分の生きてきた証であり今の自分を形成するもの。それを無くすのはとても怖い事で、無くした記憶を取り戻そうとするのもまた勇気のいる事だと思いました。
家族の在り方、自分が自分である事、自分の生き方、人を愛する事、色んな事を考えさせてくれます。
タイトルの「Blackbird」には「不運」「不幸」といった意味があるそうです。不運にさよならを、テーマや内容はちょっとシリアスですが、笑い所もたくさんあり、明るく温かい余韻が残る素敵な舞台でした。

是非、お時間ありましたら劇場で、リアルタイムで観て下さい。『ByeByeBlackbird』公演情報ページ
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演劇集団キャラメルボックス25thスプリングツアー『ByeByeBlackbird』 [観劇]

昨日は演劇集団キャラメルボックスの公演『ByeByeBlackbird』を観てきました。
昨日・今日は前夜祭で、終演後に脚本・演出家さんと役者さんとのアフタートークがあったのです。
色んな興味深い話を聴けて、とっても楽しいひと時でした。

2010年6月、世界各地で新種の熱病が流行。その後遺症で、数百万の人々が記憶を失った。
ナツカの場合は、11年分の記憶。その結果、彼女の心は16歳の頃に戻ってしまった。
ナツカは、記憶喪失者が再教育を受ける学校に通い始める。
そこには、他に4人の16歳がいた……。
(公式サイトより)

明日からが通常の公演なので、ネタバレを避けるため今回は感想書けません。
何を書いてもネタバレになりますし、ぼかしながら書いたらわけわからん文章になりますので。
前夜祭のチケット半券を持っていくと、明日以降の当日券が半額になるのでもう一度観に行って詳細な感想をアップします。
言える事は、家族のあり方や人を愛する事、自分の生き方、色んな事を考えさせられる内容でした。
凄く感動しました。
全てがわかってからもう一度観ると新たな発見がありそうです。
クライマックスで明らかになる"ある事"について、"あの人物"の心情を考えながら観るとより一層感動できそうです。
そしてあの人はきっと、彼との約束を破らない範囲でできる事をしたかったんだろうなぁ……ごにょごにょ。

公演の詳細は公式サイトへのリンクを貼りましたのでご覧下さい。
興味が湧きましたら是非劇場へ!

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劇団ZAPPA第15回公演「鬼ONI」 [観劇]

昨日、劇団ZAPPAの第15回公演「鬼ONI」お昼の回を観てきました。
(ネタバレあり注意)

「もう助からない……」
そう医者は言った。
ぐったりとしたわが子を抱きかかえ、母親は洞窟へと続く山道を登り始めた。
そこには鬼が棲むという。
人を喰らうその鬼は気まぐれに命を助け死者を蘇らすという……。

「奴の出現で医学の時間が進むかも知れんぞ! 五十年、いや、百年先までな!」
「そんなにうまくいくものか! 人に、鬼は飼いならせない!」
幕末のブラックジャック現る!
鬼伝説をモチーフに、幕末激動の時代を駆け抜けた蘭方医たちの壮絶な戦いを描く感動作。
(パンフレットより)

昨年の「花hana」を初めて観てすっかり虜になった劇団ZAPPA。
何よりもまず華麗な殺陣に目を奪われます。比較的小さな劇場だったのですが、舞台の小ささを感じさせないパワーと迫力に圧倒されます。舞台狭しと駆け回り、客席の間の花道から舞台へと駆け抜ける役者さん達の姿に魅了されました。

この物語は、漢方が主流だった時代に蘭方を広めようとする医師達の戦いと、大老・井伊直弼を討とうとする浪士達の戦いの2つを軸に進んでいきます。

蘭方医シーボルトの元で蘭方を共に学んだ3人の医師、春山、玄朴、鼎哉は江戸で猛威を振るう流行り病・疱瘡(天然痘)を撲滅すべく、種痘(現代の予防接種)を広めようとします。しかし、シーボルトがスパイ容疑で国外追放された事件を機に蘭方は禁止されてしまいます。多くの人々が疱瘡で苦しむ中、種痘を研究し広めようとする春山達。後に春山の妻になる女性・花は、まだ確立されていない種痘を自ら受けると言い出し、その後も大きな愛情で春山達を支えます。その献身的な行動と強い想いに胸を打たれました。
しかし、そこへ立ちはだかる奥医師(将軍家を診る事ができる唯一の医師……「おく」の字はこれで合ってるんだろうか?)の多岐。患者をろくに診もしないいい加減な仕事ぶり、病に苦しむ人を利用し自分にとって不都合な春山達を妨害したりなどなど、奥医師の立場を利用して人の心や命を踏みにじる多岐の姿に激しい憤りを感じました。
ある日、春山の診療所で働くシーボルトの娘・イネの元に現れた天真爛漫な青年・タダ。春山と既知の仲らしいタダはイネを「許婚」と言います。当然、猛反発するイネ。のほほんとした雰囲気とは裏腹に、呼吸も脈も停止していた人を蘇らせたり、斬り落とされた腕を繋いで元通りにしたりと、奇跡的な医療技術を持つタダ。彼は何者なのか? 謎めいた存在感と純粋な優しさと、純粋ゆえの残酷さも垣間見せるタダはとっても魅力的でした。
そして「シーボルトの娘」という肩書きに苦しむイネ。自分と母を捨て去った父、医師を志す彼女にとって、その肩書きは誇りというよりも「憎いけれど縋らなきゃ生きていけないもの」のようで、気丈に振舞うイネの寂しさを感じて胸が痛みます。同じ診療所で働く女郎出身の医師・おげんと、互いの出自や出生を巡って繰り広げられた大ゲンカと、その後イネが目にしたおげんの献身的な医師としての姿に圧倒されたイネは診療所を出て行こうとするのですが……。終盤、タダの口から語られた父・シーボルトの真相に、イネ同様涙が零れました。

一方、「井伊の赤鬼」と呼ばれた大老・井伊直弼の弾圧に憤る浪士達。
国を、仲間を想う彼らの熱い気持ちに心を揺さぶられました。
井伊討伐の筆頭である日下部祐之進の妹・律と、薩摩出身の浪士・有村冶左衛門の恋模様はほのぼのとしていて、妹達を冷やかす兄・祐之進とのやりとりは、緊迫した場面が続く中で心和む一場面です。
この時の井伊討伐シュミレーションと前述のイネとおげんの大ゲンカのシーンが、全く違う場所で起きている場面なのに、一連の殺陣で同時進行する演出が演劇ならではで面白かったです。(観てない人には伝わりづらい説明ですが……。)
井伊討伐に一丸となる浪士達ですが、必ずしも全員が同じ方向を見ているわけではなく……。様々な思惑が交錯し命を落とす者も現れ、そして冶左衛門が襲撃を受け倒れたと知った律が、兄に「私も作戦に参加させてほしい!」と願い出るシーンに、彼女の冶左衛門への強い愛と決意を感じて涙が滲みました。

終盤、3月3日の季節はずれの雪の中。
多岐によって奪われたいくつもの命を前に、憎悪に捕らわれた鼎哉は疱瘡を江戸中にばら撒こうとします。
井伊討伐に燃える浪士達は、大名行列を組んで桜田門へ向かう井伊直弼の首を狙います。
春山達は疱瘡が江戸中に広まるのを止めるため奔走。そして怪我人を手当てするため桜田門へ向かうタダ。しかしタダの前に多岐が現われてタダに刃を向けます。とことん憎い男です。重傷を追いながらも桜田門へ駆けつけたタダ。手当てを終えて倒れたタダの元へ駆けつけたイネ。見た事もないタダの医療道具を前になす術のないイネ。「たくさんの人を助けたくせに、あんたの事を助けられる人はいない!」といった趣旨のイネの叫びと、タダのイネを気遣う優しい笑いに涙が溢れました。
天真爛漫なタダと勝気で気丈に振舞うイネはとっても可愛いカップルで、この2人には幸せになってほしかったなぁと思います。

桜田門外の変が起き、奥医師の多岐は解任され、種痘がようやく広まります。希望と元気を貰えるラストシーンでした。
いつの時代も、鬼を生み出すのは人間の欲や負の感情であって、そして鬼を制することが出来るのも、人間の愛や希望なんだろうなと思います。
とっても素敵な舞台でした。


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音楽劇『新・センセイの鞄』 [観劇]

今日は紀伊国屋サザンシアターへ音楽劇『新センセイの鞄』を観に行ってきました。

30才余りの年の差を越えた老齢のセンセイと教え子ツキコさんとの淡々とした恋。
川上弘美さんの原作小説で、センセイ役は沢田研二さん、ツキコ役は富田靖子さんです。
昨年演劇集団キャラメルボックスを退団された細見大輔さんも出演されています。
(私のお目当ては細見さんでした^^)

ツキコのモノローグの後、朗々と歌う沢田研二さん。歌詞がとっても切なくてジーンとします。
そしてとっても素敵な歌声に惚れ惚れでした。ザ・タイガースの頃や、その後ソロで活躍された時代を知らないのですが、今日の歌声を聴いて、「もっと数年早く生まれたかった!」なんて思いました。

赤提灯のさがった居酒屋で、たまたま再会したセンセイとツキコさん。何度か居酒屋で顔を合わせ言葉を交わす2人の間の空気が、お互いを尊重し敬意を払いつつもゆっくりゆっくり近付いていく様や、下町を思わせる雰囲気がどこか懐かしく、心和みます。
国語の教師らしい教養と落ち着きに満ちたセンセイの所作が魅力的で、可愛らしい子どもっぽさを残すツキコさんとのやり取りにも和みます。
センセイの「ツキコさん」と呼ぶ声が、だんだんと愛しさが込められたものになっていくのにジーンとなりました。

印象に残ったのは、かつての妻の話をした時の先生の言葉です。
妻は自由奔放で奇抜な行動をとる人だったと語るセンセイ。彼女の行動が招いた騒動の後、センセイに叱られてしゅんとなった彼女が、「人が生きていくことって、誰かに迷惑をかけることなのね」と言った言葉に、「私は迷惑をかけない。自分の個人的な事を人間の全部の事のようにとらえないでくれ」(一字一句同じではありませんがこんな趣旨の言葉でした)とセンセイは返します。聞いていて「これは言われた方はキツイなぁ」と思いました。関わりを持つ事を拒否されたも同じです。
おそらく、孤独で愛を知らずそしてそれを自覚していなかったセンセイ。そして同じく孤独だったツキコさん。2人が再会して惹かれ合うのは必然だったのかもしれません。

ツキコさんには恋人がいましたが、その人はツキコさんとの恋愛に悩み、その事をツキコさんの友人に相談するうちにその友人と結ばれてしまいます。申し訳なさそうにしている友人に明るく振舞うツキコさん、「自分は恋愛に向いてない」といった旨の事を口にしますが、ツキコさんの孤独を一層感じて切ないです。
そんなツキコさんにアプローチする同級生、細見さん演じる小島孝さん。センセイと共に参加した、高校の恩師とOBが開催するお花見でツキコさんと再会した彼は、同級生と学生結婚の後に離婚したと語ります。
そしてお花見会場でセンセイを美術の女性教師・石野先生に取られてしまったような形になって、内心面白くないツキコさんの心を察したのか下心がそもそもあったのか、彼はツキコさんを連れ出し行きつけのバーへ誘い口説きます。ツキコさんを口説く小島さんはとっても色っぽくて素敵でした!
いつもセンセイとは次に会う約束などはしておらず、すれ違ってしまっていた事もあってツキコさんは小島さんと会うようになります。が、やはり彼女が想うのはセンセイの事。一見、軽い雰囲気の男性に見える小島さんですが、ツキコさんに対する気持ちは真摯なものだったと思います。ちゃんとツキコさんの事を見ているから。けれど、小島さんといる時のツキコさんはセンセイといる時ほど活き活きとしていません。
彼女は自分を「子どもだ」と言います。そんなツキコさんと、行きつけのバーを持ち大人の強引さを持つ小島さんとでは、結ばれる事は叶わないのだろうなと感じました。
そして、この一連のシーンに登場した石野先生と小島孝さんは、ツキコさんのセンセイへの気持ちを確固たるものにしたのだと思います。

終盤、自分の恋心を自覚したセンセイが吐露した想いと、それに対するツキコさんの悲痛な叫びに涙が滲みました。不器用なセンセイと一途なツキコさん。静かで、でもとても深く強い愛情を感じました。
ラストシーンは切なくも温かくて、センセイはいつまでもツキコさんの側にいると感じさせてくれました。

帰り際に紀伊国屋で原作小説を買ってきました。
生演奏のチェロとアコーディオン、パーカッションの演奏を思い返しながら、またゆっくりとこの物語に浸りたいと思います。

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイの鞄 (文春文庫)

  • 作者: 川上 弘美
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/09/03
  • メディア: 文庫



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演劇集団キャラメルボックス25thハーフタイムシアター『ミス・ダンデライオン』『南十字星駅で』観劇 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスのハーフタイムシアター、クロノスジョウンターの伝説『ミス・ダンデライオン』『南十字星(サザンクロス)駅で』を観てきました。

『ミス・ダンデライオン』
横浜大学付属病院で働く医師・鈴谷樹里(すずたにじゅり)は、11歳の頃、小児性結核で入院していた。その時、同じく入院していた作家志望の青年・青木比呂志(あおきひろし)と出会い、「ヒー兄ちゃん」と呼んで慕うようになる。ヒー兄ちゃんは、幼い樹里に楽しいお話をたくさん聞かせてくれていた。しかし、ヒー兄ちゃんはチャナ症候群という難病のため、亡くなってしまう。
19年後、樹里は、チャナ症候群に劇的な効果をもたらす新薬を手に入れる。ヒー兄ちゃんを救うため、樹里はクロノス・ジョウンターに乗り込み、19年前の過去へと飛ぶ。

『南十字星駅で』
元エンジニア・野方耕市(のがたこういち)は、 79歳。ある日、熊本の科幻博物館から、収蔵品の修理を依頼される。それは、43年前に自分が開発した、クロノス・ジョウンターだった。修理するうち、野方の脳裏に青年時代の記憶が蘇る。大学4年の夏、野方は親友を失った。名前は萩塚敏也(はぎづかとしや)。萩塚は屋久島で沢登りしている最中、鉄砲水に流されて亡くなったのだ。萩塚に屋久島行きを勧めたのは、野方だった……。
萩塚と最後に会った日に、もう一度行こう。野方はクロノス・ジョウンターに乗り込み、57年前の過去へと飛ぶ。

(公式サイトより)

この作品に登場するタイムマシン「クロノス・ジョウンター」は、ドラえもんに登場するような完璧なタイムマシンではありません。過去に滞在できる時間に制限があり、そのタイムリミットを過ぎると元いた時代よりも更に先の未来へ弾き飛ばされてしまいます。過去へ行けば、現在には二度と戻って来れない。この制約が登場人物達の気持ちや物語の緊迫感を盛り上げてくれます。
自分の全てを捨ててでも、過去に行って大事な人を助けたい、そんな主人公の強い想いに心打たれました。
また、SLをモデルに創られたという巨大なクロノス・ジョウンターの起動シーンはとても迫力満点でかっこいいです。主人公達の必死な想いを乗せている、その重みが伝わってきました。

以下若干のネタバレを含みますのでご注意下さい。





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『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』千秋楽 [観劇]

昨日はキャラメルボックスのクリスマスツアー『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』を観て来ました^^

2回目なのであらすじと細かい感想は端折りまして。
展開がわかっていても、終盤の阿部さん・多田さんによる秋人の叫びには涙が滲みます。
それぞれの場所でクリスマスケーキを囲むラストシーンにジーンとしました。

そしてこの日は、出演者の前田綾さんの誕生日でした。
役者さんの誕生日に観劇できたのは初めて。
全員で「ハッピーバースデー」を合唱、綾さんのコメントに大ウケでした。
クリスマスツアー千秋楽恒例の、役者さんによるキャラメル配りも初体験!
お目当ての役者さんからはもらえませんでしたが、でも間近で見れたので良かったです。
細見さんかっこよかったぁ!

とっても楽しい素敵なクリスマスになりました!

劇場ロビーに飾られていたツリーのオーナメントです。
この作品のメインキャストのフィギュア、お客さんの手作り品らしいです。凄い!
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演劇集団キャラメルボックスクリスマスツアー『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』 [観劇]

昨日のお昼、演劇集団キャラメルボックスのクリスマスツアー『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』を観に行ってきました。
(ややネタバレあり注意)

<あらすじ>
神田で出版社の社長をしている三沢静治は、無断欠勤を続けている女子社員を探す為、新宿のライブハウスに行く。
中に入ると、ステージ上で演奏していたのは、彼の息子・響太だった。
息子が音楽活動をしている事を知らなかった三沢は、ライブが終わってから響太を問い質すが、事情を知らない響太の友人ともみ合いになり、頭に怪我を負ってしまう。
病院で目が覚めると、三沢の耳には不思議な力が宿っていた。
口から出る言葉とは別の「心の声」が聞こえてくるのだ。
家族の本音が聞こえてきて困惑する三沢だったが、娘の奏が何か隠し事をしている事を知り、その原因を調べ始める―
(Talk&Photobookより)

公式サイトやパンフレットの写真と文章からイメージしていた物語とは大きく違っていて、良い意味で裏切られた感じです。
娘の、息子の心の声は、普段の会話からは想像もつかないほどきつく冷たいものだったと知ってしまったお父さん。その戸惑い振りに胸が痛みます。
それでも、今まで仕事にかまけていて、家族の繋がりが上辺だけのものだと気づけずにいた事を反省し、息子と娘ときちんと向き合おうとする姿、「何を今更」「今まで通り放っておいて」と拒絶されてもぶつかっていく姿は、本当に家族を愛しているのだと伝わってきて温かい気持ちになりました。
そして、娘・奏の隠し事。奏が手に怪我をしているのを見て、バイト先の学習塾で何か不穏な事が起きているのではないかと感じ、三沢は経営者・黒石に会いに行きます。両親を亡くし兄弟3人で塾を経営していると言う長男の黒石春樹。そこで聞いた不審な春樹と次男・夏雄の心の声。犯罪の匂いを感じた三沢ですが、確たる証拠は何も無い。奏をただひたすら心配し、周囲に「その推理は強引だ」と言われても春樹達を探る三沢にエールを送りたくなりました。
また、奏が想いを寄せる末弟・黒石秋人はろう者で手話を用いて会話をしています。兄弟と、奏もごく当たり前に手話で会話をしている事、そして、手話のわからない三沢は秋人の心の声を聞いて彼の想いを理解する、という作りがクライマックスの魅せ所の足がかりにもなっていて、改めてこのお芝居の作りに感嘆させられます。
登場人物中唯一、心の声と実際の言葉が全て一致している秋人が、クライマックスで吐露した叫びに胸を締め付けられました。秋人の手話と表情、そして秋人の心の声を発している役者さんの声と言葉が完全に1つになっていて、秋人の兄達への想いと、自分の存在に対する気持ちが痛くて切なくて泣けてしまいました。

ラストでこの不思議な力を失った三沢ですが、まだまだ家族の関係の修復は始まったばかり。だけど家族の気持ちを知ろうとする事がその一歩であって、それこそが大事な事なんだなぁと思わせてくれました。
「取り返しのつかないことなんてない」
ラストで印象に残った響太の友人・詩郎の台詞です。
オータムツアーの『さよならノーチラス号』でも同じ台詞がありましたが、本当にその通りだなぁと思います。

サポーターズクラブで千秋楽のチケットを取ってあるのですが、公式サイトや役者さん達のブログを見て早く観たくてうずうずし、そして水曜日と木曜日にはこの舞台にも出演している2人の役者さんによる劇団内ユニット「ぺリクリーズ」のミニライブが終演後にあると聞いて居ても立ってもいられなくなり、初めて当日券で観に行きました。
劇中でも歌われた2曲をフルサイズで歌ってくれました。ギターも歌もプロ級に上手くて、トークも面白くて、お芝居はもちろんミニライブもとっても素敵でした。
また25日に観に行くのが楽しみです。

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