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漫画 『北走新選組』菅野文 [漫画]

新撰組の戊辰戦争時代を扱った作品です。

慶応三年、大政奉還。これを是としない旧幕府強硬派の中に、かつて京で名を馳せた新選組の姿があった。闘い続ける彼らは北へと転戦し、やがて蝦夷地へ至る……。
土方歳三を中心に義を信じ、義に殉じた新選組隊士達の姿を描いた短編集。

新選組を扱った作品で、戊辰戦争をメインに描いている作品は中々無いと思います。武士の時代の終焉、それでも自分達の信じたもののために、武士であり続けた男達の戦いぶりに心震えました。
少女漫画でありながら、戦闘や死の場面の描写に一切の容赦が無く、凄絶な彼らの戦いをきっちり描いています。

局長・近藤勇に最期まで付き従い、函館に転戦する土方と共に戦った隊士・野村利三郎の物語『碧に還る』。
命を預けた土方への憧憬と彼自身の武士としての生き様、そしてその壮絶な最期に涙が止まりませんでした。武士の時代が終わろうとする中で、武士でありたいけれど本当の武士って何なのか、苦悩しながら生き方を模索する姿と、見つけた生き方に殉じた彼の最期の言葉に心震えます。
彼が近藤から土方への言伝を告げたシーンも涙なしには見らません。彼の想いを受けた土方の言葉や行動にも熱い想いを感じて心打たれました。

土方から託され新撰組最後の隊長となった相馬主計の物語『散る緋』。
近藤の死を経て、野村利三郎と共に土方に従い函館で戦った彼は、戦友の野村、そして副長土方の死を目の当たりにしました。明治維新後、新選組の光も影も背負った彼は、土方の願い通りに新選組に幕を引きます。武士として新選組隊士として殉じたその壮絶な覚悟にまた涙が溢れました。

敗色濃厚な中、函館新政府の樹立に貢献した土方歳三の物語『殉白』。
「何の為に戦ったのか」近藤亡き後の戦いの中で自問する彼の姿は、強さの中に儚さが見え隠れして、まるで死に急いでいるようにも見え胸が痛みます。
この頃、寄せ集め集団の新選組を厳しく律し恐れられた鬼副長の顔はなりを潜め、陸軍奉行として先陣切って戦う激しさと、局長の近藤を失っても自分に付いてくる隊士達への優しさを見せていて、新撰組の為に在った彼の生き様とその最期に涙が止まりませんでした。

作者の創作部分もあり美化されている所もありますが、歴史にほぼ忠実で、作者の「歴史はファンタジーではない」という言葉にとても共感しました。
死を過度に美化する事無く、動乱の時代を生きて戦った彼らの想いや生き様が、端正な絵柄と重厚なシナリオで描かれた良作です。
新選組ファンにはもちろん、歴史好きな方にもお勧めです。



北走新選組 (花とゆめCOMICS)

北走新選組 (花とゆめCOMICS)

  • 作者: 菅野 文
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2004/09/17
  • メディア: コミック


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