SSブログ

アンドリュー・ディビス監督 『穴/HOLES』 [映画:DVD]

2003年にアメリカで公開された作品。日本では劇場未公開です。

先祖のおじいちゃんがヘマをしたせいで、呪いをかけられ、不幸の家系になってしまったと信じる少年スタンリー。
彼はある日、運悪く無実の罪で捕まってしまう。そして自分の潔白を証明することをあっさり諦め、少年矯正施設行きを受け入れる。しかし、そこは想像を絶する過酷なところだった。砂漠のど真ん中に建つその施設では、恐ろしい女所長が恐怖支配を行い、“人格形成のため”と称して、来る日も来る日も少年たちに大きな穴を掘らせていた。
だがその“穴掘り”には、ある別の大きな企みがあったのだった……。

おっとりした性格のスタンリー少年が放り込まれた矯正施設「グリーンレイク」は、緑の湖という名とは裏腹に荒涼とした砂漠の中に建っていて、あらゆる意味で荒れ果てた所です。
「一日中、灼熱の下で穴を掘ればいい子になる」という無茶苦茶な理念の下、深さ・直径1.5mもの穴を1人1つずつ、僅かな水と食料で掘らせています。威張り散らす所長の右腕・Mr.サー、彼ですら恐れる女所長・ルイーズ、そして一見少年達の理解者に見えるDr.ペンダンスキーも、ある少年への態度から非常に腹黒い人物だとわかります。
過酷な強制労働と、施設にいる非行少年達との関わりの中で、彼らに屈するでなく真っ向から対立するでもなく、流されているようででもしっかりと自分を保っているスタンリーの姿、そこから数々の確執を経て理解し合い友情を築く少年達の姿が魅力的です。

ある事件をきっかけに施設を脱走した友人・ゼロを追ってスタンリーも飛び出します。少年達の喝采を背に受けて、四方640kmに渡る砂漠での冒険がやがて全ての伏線を繋ぎあわせていきます。
「グリーンレイク」がかつて本当の緑に満ちた湖だった頃に起きたある悲恋、先祖が犯したミスによる呪いのいきさつ、犠牲者にキスの痕を残す事から「キッシン・バーロウ」と呼ばれ恐れられた女強盗の一味、そして現在のグリーンレイクで行われている過酷な穴掘り、スタンリーが心を通わせたゼロ、一見何の関連も無いような出来事がラストに全て収束していく様はご都合主義なんて見解を吹っ飛ばすほど爽快でした。

少年達の友情と冒険には童心に返って惹き付けられ、過去の悲恋に端を発した様々な事件には人種差別や罪と罰、復讐など考えさせられる事がたくさんあり、複雑に絡み合った過去と現在が1本の道に繋がる練られたストーリー構成には感嘆しました。

終盤でこの砂漠に降ってくる雨に、過去の罪と悲しみを洗い流し、現在の罪を許してくれるような温かさを感じます。

ラストもこの上ないハッピーエンドで締めくくられていて、不運が降りかかっても、諦めずに進めば運を切り開いて行けるのだと感じさせてくれました。
子どもから大人まで、幅広い世代で楽しめる作品です。日本では劇場公開されてないなんて勿体無いなと思います。お勧めです。


穴 / HOLES [DVD]

穴 / HOLES [DVD]

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メディア: DVD



nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。