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エリザベス・テーラー主演『緑園の天使』  [映画:DVD]

1945年に制作された作品です。原題は『NATIONAL VELVET』

1920年。イギリスの片田舎で肉屋を営んでいるブラウン家の娘ヴェルヴェットは何よりも馬が好きで、どうにかして自分が1匹飼えるような身分になりたいと願っていた。
ある日、彼女の家を頼ってマイという騎手くずれの少年がやって来た。彼の亡き父はヴェルヴェットの母がかつてドーバー海峡を泳ぎ渡った時のコーチなのであったが、彼はこのいきさつを知らず、今ではブラウンの金を盗んで逃亡しようとするひねくれ者であった。しかし一家の温かい空気は彼を引きとめ、やがて村の暴れ馬パイがくじ引きでヴェルヴェットのものになると彼は親身に彼女の乗馬教師になってやった。ヴェルヴェットはパイを訓練してグランド・ナショナルの障碍大レースに出場させようと懸命になっていたが、この無謀な企てに両親は許しを与えた。マイは彼女の金を預ってロンドンに行き、逐電をおそれるブラウンの危惧に反して出場許可を得て戻って来た上、いよいよ練習にはげんだ。

大人でも手懐けられない気性の荒い馬・パイをヴェルヴェットは難なく乗りこなしてしまいます。馬の事を語る時のきらきらした瞳と、暴れ馬を乗りこなす凛とした姿が魅力的でした。
そして純粋なヴェルヴェットの立ち振る舞いは、すれた放浪者となっていたマイの心を変えていきます。レースでの事故がトラウマとなって馬に乗れなくなってしまったマイは荒れた心を抱え放浪していました。しかし、ブラウン家に雇われてヴェルヴェット達と過ごす内に、彼の荒んだ目つきが少しずつ柔らかいものに変わっていきます。始めはブラウン家で未遂に終わったものの盗みを働きかけ、「馬なんて嫌いだ」と言い、瞳を輝かせるヴェルヴェットに対しても突き放すような態度を取っていたマイですが、パイの並外れた跳躍力に興奮し、グランド・ナショナルという途方も無い夢を抱くヴェルヴェットの力になる一心な姿、これが彼の本質なのだと感じました。
またドーバー海峡横断という偉業を成し遂げたヴェルヴェットの母の、2人を見守る温かい眼差しも印象的です。余計な手出しはせず、ここぞと言う時に自らの経験を踏まえて送られるヴェルヴェットへの言葉やプレゼント、子ども達を信頼している姿は理想の母親像でした。

そしてレースの直前、ヴェルヴェットはマイが見つけてきた騎手の態度が気に入らずクビにしてしまいます。今から探しても到底間に合いません。どうするのだろう、マイがトラウマを乗り越えて出場するのだろうかと思っていたら、ヴェルヴェットはマイに「髪を切ってほしい」と頼みます。万が一落馬すれば命を落としかねない危険なレースだとマイは反対します。そして当時の規約では女性が騎手になる事はできません。バレたら当然失格、観客の怒りに触れるかもしれない、そんなリスクを背負ってもヴェルヴェットはパイと共にレースに挑みます。「練習通りやれば大丈夫よ」とパイに語りかけるヴェルヴェットの表情、30~40頭の馬が出走するレースの緊迫感、落馬する者や障碍の前で立ち往生する馬が現れる度に血相を変えるマイ、先頭集団を走るパイの姿、片時も目を離せませんでした。

レースが終わり、一躍有名人になったヴェルヴェットとパイ。ブラウン家には映画出演のオファーが殺到し、父親は浮き足たってしまうのですが、ヴェルヴェットはパイの生涯を大切に思い全て断りました。
そしてマイは新たな人生を始めるため再び旅立ちます。悲しむヴェルヴェットに、「彼の人生を縛ってはいけない」と諭します。自分の母親とマイの父親との繋がりだけでも教えてあげたいと願ったヴェルヴェットは、母の言葉に背を押されマイを追いかけていきました。
ヴェルヴェットとマイの間には友情を超えた絆が芽生えたんだと感じます。

パイの颯爽と走る姿を見ていると、荷車を引いたりして人間に使役するためでなく、ただ走るためだけに生まれた馬っているんだろうなと思います。(レースも人間のため、と言えますが……。)
そして夢は叶うと信じ続ける事、その想いの強さが夢を叶えるんだと思わせてくれます。
イギリスの田舎の風景も美しく、素敵な作品でした。


主演のエリザベス・テーラーさんですが、3月23日に心不全で亡くなられたそうです。
ご冥福をお祈りいたします。


緑園の天使 [DVD]

緑園の天使 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD



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