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少女漫画『少年残像-Boy's next door-』 由貴香織里 [漫画]

由貴香織里さんの短編作品です。
コミックス発行は1998年。現在は文庫版が出ています。

ロサンゼルス全土を震撼させた少年連続殺人事件の犯人<通称・目隠し男(ブラインドマン)>は、小学校教師のエイドリアンだった。
そしてエイドリアンの最後の犠牲者、ストリートボーイのローレンスこそ、エイドリアンが狂おしく愛した恋人だった……。

悲しいまでに残酷で、それでも純粋に愛し合った2人の物語に何度読んでも泣けてしまいます。
猟奇的な殺人を繰り返すエイドリアンの幼少時代のトラウマ―見知らぬ男達に身体を売り、自分を愛さないどころかまともに目を合わせることさえしなかった母、その原因である自身の出生の秘密を知り起きた惨劇―深く傷ついた幼いエイドリアンが取った行動に胸が痛みました。
孤児となったエイドリアンは、自分のような子どもを世の中からなくしたいという思いから教職に就きます。生徒にも他の教師にも慕われるいい先生になるのですが、壊されたエイドリアンの心は、夜になると金で身体を売る少年達を求めた挙句最後には目隠しして殺してしまう殺人鬼に……。そしてその現場を目撃したローレンスをも殺そうとするのですが、エイドリアンの秘密と過去を知ったローレンスと何度か会い共に過ごすうちに惹かれあうようになります。
エイドリアンの愛されたいという想いと、お金で関係を持つ事とその行為そのものに対する嫌悪感、そして何より汚れた自分自身への憎悪が、歪んだ欲望と衝動になって現れていたんだと思います。エイドリアンが放った悲痛な叫びに
「もう殺さなくてもいい。もう許してやってよ。自分(エイドリアン)を。」
と言ったローレンスの言葉に、目を見開いたまま泣くエイドリアン同様涙が溢れました。
そしてローレンスが語った身体を重ねる行為の意味に、彼の深い孤独と絶望が現れていてまた切ないです。
変貌し裏組織のボスとなった実の兄・ダラスの下で、男娼として傷つきながら生きるローレンス。それでもエイドリアンに綺麗な笑みを見せるローレンスの姿が切なくてたまりません。
ローレンスが組織から逃げ出そうとしている事を知ったダラスは、卑劣なやり方で2人を引き裂こうとします。そしてローレンスはエイドリアンに殺される事で、ダラスの下から逃げ出しエイドリアンだけのものになるために芝居を打ちました。ローレンスの芝居を信じてしまったエイドリアンはローレンスにナイフを突き立ててしまいます。ローレンスの言葉が芝居だったとわかり絶望したエイドリアンは、直後に逮捕され裁判に、そして―
悲しい結末なのに、ラストシーンで抱き合う2人の幸せそうな微笑みが切なくて泣けてしまいます。

由貴さんの繊細で美麗な絵が、2人の抱えた傷や悲しみ、愛情と残酷さを惹き立てています。
由貴さんの耽美な世界観や、綺麗で悲壮な物語が好きな方にはお勧めです。
マンガを読んでいるというよりは、古き良き映画を観ているような雰囲気の作品です。


少年残像 (白泉社文庫 ゆ 1-15)

少年残像 (白泉社文庫 ゆ 1-15)

  • 作者: 由貴 香織里
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2009/11/17
  • メディア: 文庫



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