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小説『ハゴロモ』 よしもとばなな [小説]

よしもとばななさんが描く癒しの物語です。
刊行は2006年6月(文庫版)

失恋の痛みと、都会の疲れを癒すべく、ふるさとに舞い戻ったほたる。大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを、彼女は取り戻せるだろうか……。
赤いダウンジャケットの青年との出会い。冷えた手をあたためた小さな手袋。人と人との不思議な縁にみちびかれ、次第によみがえる記憶―ほっこりと、ふわりと言葉にくるまれる魔法のような物語。

8年続いた不倫の恋。彼と過ごす為だけにあった時間が突然一方的に終わりを迎え、ぼろぼろになり立ち上がれなくなってしまったほたる。彼との時間を作るためだけに生き、待つだけの受け身の日々は不自然なものなのだと、彼女はどこかで気づいていたのかもしれないと思いました。
帰郷したほたるは、祖母が経営する喫茶店で働きながら暮らしていきます。大きな川が流れる町で、祖母を始めちょっと変わった温かい人達と触れ合いながら、少しずつ自分を取り戻していくほたるの姿に、自分も癒されるような感覚に浸れます。
そして、町の中で出会った赤いダウンジャケットを着た見ず知らずの青年・みつるに懐かしさを覚えたほたる。父の事故死によって、心の病を抱えてしまった母と暮らすみつるは、とても穏やかで大らかな心の持ち主です。趣味だと言って無許可のラーメン店を営むみつると話すようになって、「みつるの母の為に何かできないか?」と、自分から行動する気力を、本来あるべき生き方を取り戻したほたるの明るい表情が見えるようです。
また、ほたるがみつるの所でラーメンを食べるシーンが印象的で、とても温かい優しさに満ちています。同じくばななさんの作品『キッチン』でもそうですが、「大切な誰かと一緒に食事をする」という事を、ばななさんが重要視しているのが伝わってきます。

ほたるを取り巻くちょっと変わった人達、そしてほたるが幼い頃、高熱に浮された時のおぼろげで不思議な記憶が現在の出会いと繋がって、ますます故郷での人との繋がりを強く温かいものにしていく様にじーんと心を揺さぶられます。
登場人物達の言葉一つ一つがほっこりと優しく温かく、どこか懐かしい気持ちになれました。
タイトル『ハゴロモ』は 天人が着て自由に空を飛ぶ事ができる、薄く軽い衣の事。傷付き疲れて震えている人に、天人がそっと羽衣をかけてくれるような、静かな優しさが溢れている物語です。


ハゴロモ (新潮文庫)

ハゴロモ (新潮文庫)

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 文庫



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コメント 2

群馬で出会いブログ

素晴らしいブログを読ませていただきありがとうございます。
これからも更新頑張ってください。

by 群馬で出会いブログ (2010-01-25 16:35) 

リュカ

>群馬で出会いブログさん
もったいないお言葉、ありがとうございます(〃▽〃)
更新、頑張ります!
by リュカ (2010-01-28 00:13) 

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