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推理小説『眠りの森』 東野圭吾 [小説]

東野圭吾さんの数少ないシリーズキャラクター・加賀恭一郎刑事が登場する作品です。
発行は1989年。

高柳バレエ団の事務所で一人の男が遺体となって発見された。容疑者はバレエ団に所属するダンサー・斎藤葉瑠子。バレエ団側は男は事務所に押し入った強盗で正当防衛だと主張するが、捜査を進める内に幾つかの不審点が浮かび上がって来る。
そんな中、今度はバレエ団の演出家・梶田康成がリハーサルの最中に毒殺された。先の事件と関連はあるのか?
捜査に当たる加賀恭一郎刑事は、高柳バレエ団に所属するダンサー・浅岡未緒に惹かれながらも、事件の真相を追うのだが……。

バレエ団のダンサー達がとてもストイックで一途で、それ故に起きた悲しい一連の事件に胸が痛みます。
平凡な日常生活からは想像もつかない壮絶な努力で作り上げたダンサーとしての身体、そしてプリマドンナの地位。それは何を犠牲にしても守らなくてはならないもの。そのために悲壮な決意で冒した罪。華やかな世界の裏にあるダンサー達の悲しみや苦悩、バレエの世界の厳しさが強く伝わってきます。真相が一つづつ明らかになっていくうちに、そこにある悲しみが浮かび上がって胸が詰まります。
そして、心惹かれた未緒を温かく見守りながらも、彼女達の過去や周囲を捜査する加賀刑事の想いも切ないです。
そして加賀刑事の浅岡未緒への眼差しがとても温かく、男として彼女を想う気持ちと、刑事として事件の真相を追う相反する気持ちを抱えた姿は、それでも優しさと誠実さに満ちていて、悲しみに満ちたこの事件に温もりを添えてくれています。終盤の加賀刑事から未緒への言葉は、切ないながらも先への希望を思わせるものでジーンとしました。

加賀刑事の初登場作品『卒業―雪月花殺人ゲーム―』(この時は大学生です)においても、彼は切なく不器用な恋をしています。その後も割りと苦難に満ちた人生を送っている加賀刑事。今作での恋の進展は未だ描かれていませんが、どうか彼にはその誠実な人柄に見合った幸せを掴んでほしいと思います。


眠りの森 (講談社文庫)

眠りの森 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/04
  • メディア: 文庫



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