SSブログ

小説『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき [小説]

宮部みゆきさんのほのぼのした7つの短編連作です。

ある夜。泥棒に入った家でミスをして気を失ってしまった35歳の主人公。目が覚めたると自分を覗き込む2つの同じ顔があった。
両親が同じ時期に駆け落ちしてしまい、取り残された中学生の双子の少年・直(ただし)と哲(さとし)。2人は屋根から落ちてきた泥棒のおじさんに、警察に突き出さないかわりに父親代わりになることを求める。始めは迷惑がっていた主人公だったが、しぶしぶ2人の父親を演じるうちに少しずつ家族としての絆が芽生えていく。

ちょっと非現実的な設定なのですが、直と哲の可愛らしさと大人っぽさにそんな事を忘れて惹き込まれます。
両親がいなくなっても、寂しがるわけでもなく困ることも無く2人で暮らしていて、中学生らしいしたたかで生意気盛りな面もあり、純真で可愛い面もあり、読んでいてあっという間に2人の事が好きになりました。そして2人の存在は裏家業で生きる主人公の心も解きほぐしていきます。題名の「ステップファザー」とは「継父」の事で、無邪気に慕ってくる「息子達」に対して、この「お父さん」は、いつかは本当の両親が戻ってくるのだから父親気分に浸ってはいかん、と気持ちを抑えているのですが、 それでも双子との生活にある幸福感に抗えなくなり、双子の事を本気で叱ったり、いつか来る別れに寂しさを感じたりと、少しずつ父親の顔になっていく様にじーんとします。
双子の周囲で起こるちょっとした事件も、単なるミステリー色を添えるだけでなく3人の絆を強める役割を果たしています。他の宮部さんの作品とは少し雰囲気が違う感じもしますが、とてもほのぼのと温かい空気に満ちた作品です。遺棄された子ども達、裏家業に生きる男、と来れば暗く重い展開になりそうですが、無邪気な双子と非情になりきれない男の関わりは暗い影など微塵も感じさせず、温かく優しい読後感に包まれます。
終わり方が中途半端というか、続きがありそうな終わり方をしています。続編は書かれているようですが、単行本化の予定は無いとの事で残念です。

子どもを放り出して行った両親、さほど困らずに生活している子ども達、継父として彼らに関わる事になった男。家族のあり方や絆って何だろう?と考えさせられる作品でもあります。


ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/07
  • メディア: 文庫



nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。