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小説『パコと魔法の絵本』 関口尚 [小説]

後藤ひろひとさん原作の舞台『MID SUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』の脚本を小説に書き下ろした作品で、映画化も決定している作品です。

ある病院に心臓発作を起こして入院した大会社の会長・大貫。一代で会社を大きくした彼は他人全てを見下し、我儘で偏屈で病院中の嫌われ者だった。ある日大貫は病院内で絵本を大事そうに抱えた少女・パコと出会う。誤解からパコの頬を叩いてしまった大貫は、浅野医師からパコは事故の後遺症で記憶が一日しかもたないのだと聞かされる。自分の行為を深く反省した大貫が叩いてしまったパコの頬にそっと触れた時、パコは驚くべき事を口にした。
「おじさん、昨日もパコのほっぺに触ったよね?」
大貫はパコのために自分が出来る事を探し始める。パコの心に残りたい、パコに特別な思い出を残したい一心で。そしてそれは病院中を巻き込んだ奇跡の物語となる。

序盤の大貫老人の言動は読むのを止めたくなるくらい腹が立つのですが、パコと出会ってパコの境遇を知ってからの彼は本当に生まれ変わったようで、パコのために必死で動く姿はとても感動的でした。
パコの持っていた絵本、我儘放題のガマ王子がザリガニ魔人と戦う中で自分のこれまでの行いを悔やんで涙するというお話が大貫の心を揺さぶり、その姿にまた心打たれます。
そして大貫だけでなく他の面々も変わっていきます。ある人は過去の行いを悔やみ、またある人は駄目な自分に決別する、その様にも感動です。「自分の行いに誰しも後悔し涙する、そして少しだけ正しくなるのだ、きっと。」という大貫の言葉。最初から正しい人間はなんかいないのだと、希望や勇気の湧いてくる言葉だと思います。
そしてクライマックスは思いもかけない展開で涙が止まりませんでした。

人は変われる、そう教えてくれる作品です。舞台も映画も見てみたいと思います。


パコと魔法の絵本 (幻冬舎文庫)

パコと魔法の絵本 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 関口 尚
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 文庫



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