小説『どちらかが彼女を殺した』 東野圭吾

この作品は本当の推理小説です。犯人の名前がラストになっても明かされず、本文中に示された手掛かりから犯人を推理する楽しみが得られます。

妹の園子からかかってきた電話。様子がおかしいと感じた康正は一人暮らしの園子の部屋を訪れる。そこで彼が見たのはベットで冷たくなった園子の姿だった。一見自殺に見える部屋の様子。だが康正は他殺だと感じ、交通課刑事の立場を利用して独自に捜査を開始する。希薄な園子の人間関係の中で、殺意を抱く程の繋がりがあったのは元恋人と園子から恋人を奪った親友。どちらかが園子を殺したのだと康正は復讐を計画する。
一方、捜査一課の加賀刑事も自殺説に疑問を持ち、そして康正の復讐計画を知り彼を止めるべく奔走する。
犯人は男なのか女なのか？ 加賀刑事は康正の復讐を止められるのか？

状況は至ってシンプルですが、二転三転する状況に片時も目を離せません。また、加賀刑事は犯人の偽装に加え、康正の偽装も破らなくてはならない二重構造になっていて、物語の面白さと推理の難しさに拍車をかけています。容疑者と康正のやり取りより、所属は違いますが同じ刑事であり、痛みを知っている者同士の康正と加賀のやり取りに惹き付けられます。加賀刑事の人間味溢れる言動がとても好きです。
文庫版には袋閉じで解説が載っていて、本文中の手掛かりがクローズアップされ読者を真相へ導く手助けをしてくれているのでおおよその見当は付けられるかと思います。（それでも犯人の名は明かされていませんが。）
恐らく犯人はこっちだと考えているのですが、自信はありません。

犯人が明かされないままなので、何度読み返しても楽しめる経済的な作品でもあります（笑）
作中の名探偵の鮮やかな謎解きを見るのも楽しいですが、自分で手掛かりを読み取り事件の真相を推理するのもまた面白いです。

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

• 作者: 東野 圭吾
• 出版社/メーカー: 講談社
• 発売日: 1999/05
• メディア: 文庫

タグ：本 推理小説 東野圭吾