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小説『アフターダーク』 村上春樹 [小説]

村上春樹さんの独特な世界観が好きです。

深夜の都会(恐らく新宿)の様々な人々。ファミレスでぶ厚い本を読みふける少女、トロンボーンを抱えたアマチュアバンドの学生、理由の解らないまま昏々と眠り続ける少女、カップルホテルの雇われオーナーをしている元悪役女子プロレスラーとそこでひっそりと隠れるように働く女性達、深夜のオフィスで一人働く男。彼らの抱えるそれぞれの背景に、不可思議な出来事。

ある一夜の彼らの関わりは、淡々と語られ解決する事なく過ぎ去って行きます。この作品には他の村上春樹作品『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』などのような、得体の知れないどきどき感はあまりありません。何かが起こるような予兆だけを残し、物事が解決するかに見えた所で物語は唐突に終わってしまうのです。その予兆は希望の扉にも見えますし、崩壊への幕開けのようにも見えます。この放り出されたような終わり方が賛否両論なのですが(どちらかといえば否の声を多く聞くような気がします)、私は春樹さんらしく思えて好きです。「後は自由に読み手が想像する」というのとは少し違って、「この物語はここで終わるべきだ」という感じでしょうか。この放り出された感は嵌まればクセになりますね。続編を望む声もあるようですが、私はやはりこの物語はここで終わるのが正しいと思います。世間一般の評価は低めのような印象ですが、私は好きな作品です。
……とはいえ、比較すれば『ねじまき鳥クロニクル』や『ノルウェイの森』などの方が断然好きなのですが。


アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/09/16
  • メディア: 文庫



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