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クウェンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』vol.1、vol.2 [映画:DVD]

タランティーノ監督による2本で1つの物語。2003年、2004年にそれぞれ公開された作品です。

世界最強の暗殺集団に属していた女殺し屋のザ・ブライド。妊娠を機に殺し屋稼業から足を洗った彼女は結婚式の最中、組織のボスであるビルとその配下である4人の殺し屋から襲撃を受ける。夫と式に参列していた友人達、宿っていた子どもも殺され、ブライド自身も凄惨な攻撃を受け、4年間の昏睡状態に陥る重傷を負わされる。昏睡から目覚めたブライドは、襲撃を指示したビルと4人の殺し屋への復讐に向けて動き始める。(vol.1)
東京のヤクザの頂点に立つオーレン石井と、組織を辞め家庭を持ち平穏な暮らしをしていたヴァニータ・グリーンの2人に復讐を果たしたブライド。残った2人、現在は組織を離れ酒場の用心棒として働いているビルの実弟・バドと、ビルの現在の愛人でありブライドとは犬猿の仲のエル・ドライヴァー、そして結婚式襲撃の首謀者と思われるビルに復讐するため、ブライドはまず手始めにバドが住んでいるテキサスの地へ向かう。壮絶な戦いの末バドとエルに復讐を果たし、ブライドはついにビルの下へ向かう―

vol.1は凄絶なバイオレンスアクションが中心です。
タランティーノ監督が好きだという日本の古い仁侠映画や時代劇へのオマージュが盛り込まれています。そのため、人間離れした殺陣や大量の流血シーンも多いのですが、単なる暴力描写だけでは終わりません。登場人物の持つ背景がきちんと描かれていて、今の生活を守りたいと願うヴァニータ、悲しくも壮絶な過去を持つオーレン、全てを失い復讐に燃えるブライド。交錯するそれぞれの真剣な想いが、凄惨な描写から目を逸らせなくしています。
ヴァニータの娘・ニッキーの目の前でヴァニータを殺したブライドが、ニッキーに向けた言葉が印象的でブライドの復讐にかける想いの真剣さが表れていると感じました。
そして、オーレン・石井の過去はアニメーションで描かれます。暗殺集団に属する事になるオーレンの幼少時代、日本人と中国系アメリカ人の両親の間に生まれた彼女の、生きる事、地位や力を得る事への執着を植えつけた凄惨な過去が静かで流麗なアニメーションで描かれていて、彼女の存在感をより強烈でまた悲しいものにしています。
vol.2はバイオレンス描写もありつつ、けれど雰囲気は一転してビルとブライドの過去の恋愛ストーリーに重点が置かれています。
ビルは高い暗殺技術を持つブライドを認めそして彼女を女性としても愛するようになり、ブライドもビルの愛情を受け彼を愛し、回想シーンでの2人は暗殺者と言う特殊な世界に住んでいるものの、幸せそうな表情をしていました。けれど、ブライドがビルの子を身篭った時、ブライドは「この子は暗殺者の世界には住まわせたくない」と願いビルの下を離れます。ビルはそれを許さず、一方的に自分の下から離れたブライドを追い、過去を隠して別の男性と結婚しようとしていたブライドを襲撃させ、教会にいた夫や彼女の友人、神父達までも惨殺―それほどまでにブライドを愛していたのでしょう。こんな愛情は普通の女性では恐ろしくてとても受け止めきれないですね。ある意味、純粋な男なのでしょうが……。
復讐は虚しいものと言われますが、本懐を遂げたブライドの胸に去来したものは何だったのでしょう。自分を愛しそれ故に全てを奪った男、この世で最も愛しく憎い男。恐らく初めて、任務としてではなく自分の想いのままに戦い殺戮を繰り広げたブライドは、人生で一番充実していたのではないかとも思いました。

シリアスなシーンもありますが基本的にはツッコミ所満載で、(意図的な演出としての)間違った日本人や中国人をイメージした姿、物理法則を無視したアクション、数々の作品へのオマージュは元ネタがわかるともっと楽しめるのでしょう。
監督自身が「B級映画」と称するエンターテイメント性を楽しめる作品です。





キル・ビル Vol.1 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ / ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



キル・ビル Vol.2 [DVD]

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駅馬車

なんだかセクシー美女が日本刀を振り回して変な映画、っていうイメージがあったんですけど、ちゃんと人間ドラマが描かれているんですね。

殺されてしまった夫がすごく可哀想な気がします(^^;
他人の子を身ごもっている妻をもらったばかりにこんなことに。
良い人だったんでしょうね。
by 駅馬車 (2009-10-17 13:06) 

リュカ

>駅馬車さん
私も第一印象はそんなイメージでした^^;
人間ドラマがしっかりしているからこそ、ツッコミ所満載のハチャメチャっぷりとのバランスが取れて、それぞれが引き立ってるんだと思います^^

本当、この殺されてしまった夫が一番可哀想ですね><
友人達に囲まれた教会でのシーンはとても幸せそうで、良い人なんだなっていうのが伝わってきます。
by リュカ (2009-10-19 17:16) 

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