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エッセイ『男の作法』 池波正太郎 [小説]

池波正太郎さんのエッセイです。
時代を超えた「粋な男の作法」を、大上段に構える事無く柔らかい気さくな口調で語っています。
池波さんと若い編集者との対談形式で綴られていて、食事の作法や身だしなみ、お金について、人付き合い、男と女、様々な場面における池波さんの言葉が聞けます。

「寿司屋へ行った時は「シャリ」だなんて言わないで普通に「ご飯」と言えばいいんですよ」
「若いうちからいい顔というものはない。男の顔をいい顔に変えていくということが男を磨くことなんだよ。今の時代では、よほど積極的な姿勢で自分を磨かないと、みんな同じ顔になっちゃうね。」
「手紙は大事だね。書きかたは、結局、気持ちを率直に出すことですよ。あくまでも相手に対面しているというつもりでね。その時におのずから全人格が出ちゃうわけだ。」
「高い時計をしているより、高い万年筆を持っているほうが、そりゃキリッとしますよ。」(本文より抜粋)

知ったかぶりや通ぶる事を否定し、自分を律し他人への気配りを忘れない、今の時代にも充分通用する、そして男だけでなく女にも、性別年齢問わず通用する作法だと思います。
この本の中で1番共感したのは、
「やたらに東京のうどんをこき下ろす大阪の人は、本当の大阪の人じゃないんだよね。」
「東京の人も、本当の東京の人だったら決して他国の食いものの悪口というのは言わない。一番いけない、下劣な事だからね。」
と言う言葉です。池波さんはこういう発言をする人を「ばかの骨頂」と否定しており、「何も東京っ子だとか江戸っ子だとか、自慢する必要はないんだからね。」と語っています。
やはり自分の生まれた土地の食べ物や、両親の故郷の食べ物を悪く言われるのは非情に腹が立ちます。
本当に自分の故郷を愛しているなら、他をこき下ろさなくても「これはいいものだ」と主張できるはず、そして食べ物に限らず、他の物や価値感を受け入れる器を持ち得ない人は、何においても自分中心にしか考えられない常識の無い人になってしまうのではないかと思います。

池波さん自身はこの書の冒頭で、「これらは私の時代の常識であり、現代の男達には実行不可能な事ばかりでしょう。」と語っています。初めてこの本が世に出たのは昭和56年の事。ここで言われている「現代」とは昭和50年代を指しています。しかし、平成の世でも通用する話ばかりで、読んでいて思わず背筋を正してしまいました。


男の作法 (新潮文庫)

男の作法 (新潮文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/11
  • メディア: 文庫



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コメント 2

なっち♪

最近「大人の品格」とか 品格本が売れてますけど、ずいぶん前に 池波さんは 同じようなエッセイを出していたのですね^^
時代は変わっても 芯になるものは同じw
そして 芯のある人は いつの時代もカッコイイってことでしょうか^^
by なっち♪ (2009-06-09 23:44) 

リュカ

>なっちさん
時代が変わっても、人の芯になるものってやっぱり変わらないですよね^^
芯のあるカッコイイ人でありたいものです^^
by リュカ (2009-06-11 18:54) 

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