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小説『名探偵の掟』 東野圭吾 [小説]

古典的な“本格推理”のお約束事を痛快に破った短編集です。

密室殺人、バラバラ死体、童謡見立て殺人、意味深なダイイングメッセージ、孤立した別荘……様々な事件の現場に偶然居合わせ、警察の捜査が難航するのをよそに鮮やかに謎を解く名探偵・天下一大五郎。
探偵小説の世界に生きる所謂名探偵と脇役の警部・大河原番三が、数々の事件に遭遇しながらも第三者の視点で自分達の産みの親である作者やミステリー界を皮肉っていく。そして天下一が辿り着いた「最後の選択」とは……。

何故かいつも偶然事件現場に居合わせ、捜査権限の無い素人探偵が事件の謎を解く、繰り返される密室トリック、雰囲気作りのためだけの見立て殺人や孤立した別荘、不自然なダイイングメッセージ、そんな古典的本格推理の「お約束」に、この作品では天下一探偵と大河原警部が小説世界から抜け出して痛烈にツッコミを入れていきます。この2人の漫才めいたやりとりが、探偵小説の中で生きなくてはならない悲愴感に溢れていて面白く、そのツッコミ内容も的確でミステリーの作者や読者に対しても風刺が含まれています。また単なるパロディに終わらずお約束を踏まえた上での捻りの効いたオチも用意されており、推理小説を読み慣れている人ならニヤリとする要素が満載です。
推理小説のお決まりのパターンを何の工夫も無く繰り返し差し出す作者や、またそれを何の疑いも持たず受け入れる読者を「それでいいのか?」と斬り、そして単なる批判や揶揄に留まらず、自身のその後の作品(『悪意』『どちらかが彼女を殺した』など)でそれに対する答えを提示されている辺り、東野さんの腕と推理小説への愛情を感じました。

この作品も今月からドラマ化されているようですが、「どうなんだろう。」


名探偵の掟 (講談社文庫)

名探偵の掟 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 文庫



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