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小説『白河夜船』 よしもとばなな [小説]

「眠り三部作」と言われるよしもとばななさんの短編集です。

『白河夜船』
事故で植物状態となった妻を持つ男性・岩永との恋愛を続けている寺子。かつてルームメイトだった親友の死から、寺子は淋しさから逃れるように深く長く眠るようになる。食事と最低限の身の回りの事、そして岩永と会う時以外、寺子はほとんどを眠りの中で過ごすようになる……。

『夜と夜の旅人』
一年前に事故で死んでしまった芳弘。従姉弟であり恋人でもあった芳弘の死から動けなくなっていた毬絵。留学生で芳弘の高校時代の恋人だったサラ。3人を見つめていた芳弘の妹・芝美は、サラから芝美に宛てられた昔の手紙を見つけ、周囲を惹き付ける引力を持っていた芳弘と、サラの現在、そして毬絵の心を想う―

『ある体験』
酔って眠る事の増えた文は、ある夜から幻聴のような甘い歌声を聴く。そして同時に、学生時代に1人の男を奪い合った女性・春の事を思い出すようになった。憎み合いつかみ合いの大喧嘩もした文と春。今の文の恋人で文達3人を知っていた水男は「その歌声は春じゃないか」と言い、春の消息を調べると……。

3つの作品、というよりばななさんの多くの作品に共通しているのは、「身近な人の死」「(大抵の場合辛い)恋愛」「死者、もしくは死に近い場所にいる人との邂逅」というテーマです。それぞれの主人公達が抱える、夜の河に一人きり、どこまで行ってもどこにも辿り着けないような孤独が切なくて悲しくて、でもそこから死者達の主人公を想う気持ちを感じ取り立ち上がる姿が温かい読後感と、孤独を振り切る希望を与えてくれます。生きていると辛くて切なくて、「このまま眠り続けたい」と思う事がたくさんあるけれど、それを乗り越えて行く強さを人は持っているんだと感じさせてくれます。

眠る事は疲れた身体だけでなく、疲れきった心も休ませ回復させてくれるものなのだと思います。そして、どんなに孤独を抱え疲れていても、「もう眠りから覚めて現実世界へ出ても大丈夫」と思える時はきっと来るのだと感じさせてくれる作品です。


白河夜船 (角川文庫)

白河夜船 (角川文庫)

  • 作者: 吉本 ばなな
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 文庫



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