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小説『キッチン』 吉本ばなな [小説]

よしもとばななさんのデビュー作で、25ヶ国語に翻訳され読み継がれている作品です。

唯一の肉親だった祖母を亡くした大学生の桜井みかげは、祖母が懇意にしていた花屋の店員・田辺雄一とその母・えり子(実は男性)の家に居候することになる。壮絶なまでの明るさとエネルギーを放つえり子と、穏やかで優しい雄一との生活は、孤独と疲れに包まれていたみかげの心を和ませていく。そして雄一に惹かれていく予感を感じながら、みかげは「いつかはここを出なくてはいけない」と、いつかここを懐かしく思い出すのだろうと感じていた……。

冒頭で、台所を「この世で一番好きな場所」だと言ったみかげは、生きる実感や愛情を台所を通して感じ取っているんだと思いました。台所は食事を作る場所、つまりは生きる事や命に繋がる場所。自分の部屋といったパーソナルな空間ではない場所に愛着を感じるみかげの淋しさや孤独を感じました。
そして、食事を共にするという形での愛情の描写がとても深く心に入り込んできます。家族の愛情、男女の愛情、愛を伝える直接的な描写はほとんどありませんが、一緒に食事をする、お茶を飲む、それだけのシーンなのにみかげを取り巻く人々の深い愛情を感じ心が温まりました。大事な人と一緒に食事をするというのは大切な事なんですね。

雄一とえり子との生活でみかげが生きる力を取り戻していく姿に、読んでいる私も励まされているような気持ちになります。どんなに悲しい事や絶望的な事があっても、お腹はすくし眠くもなる。何があっても生きて、動かなくちゃいけない。
希望や気力を無くした時に、温かく優しい力をくれる作品です。


キッチン (新潮文庫)

キッチン (新潮文庫)

  • 作者: 吉本 ばなな
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 文庫



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きむたこ

なつかしぃ〜。
ひさしぶりにひっぱりだして読みたくなりました☆
by きむたこ (2008-07-18 11:45) 

リュカ

初めて読んだのは高校生の時でした。何年経っても色褪せない作品ですよね^^
by リュカ (2008-07-18 19:33) 

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