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小説『西の魔女が死んだ』 梨木香歩 [小説]

今月から公開が始まった映画『西の魔女が死んだ』の原作小説です。文庫化されたのは7年前で、気になっていた本の一つでした。映画化に伴い本屋さんに平積みされていて購入してみました。

中学生になって登校拒否になってしまったまいは、田舎に住んでいる「西の魔女」こと、母方のおばあちゃんの元で初夏の1月余りを過ごす事になった。イギリス人のおばあちゃんはまるで魔女のような深い知恵と知識を持っていて、まいに「魔女の修業」と称したくさんの事を教えてくれた。規則正しい生活をする事、物事を自分で考え自分で決める事、決めた事はやり遂げる事、外からの刺激に動揺しない強い心を持つ事、人が死んだ後の魂の事……。幸福で楽しい日々の中、近所に住む武骨な男性・ゲンジさんの事で、まいとおばあちゃんは言い争いをしてしまう。仲直りしたものの心のどこかに重いしこりを残したまま、転校を決めたまいはおばあちゃんの元を去った。
転校して友達も出来たまいは、おばあちゃんの元を去る時いつものように「おばあちゃん、大好き」と素直に言えなかった事をずっと後悔していた。魔女の修業をきちんと続け、次に会った時は自分の心の中を全部話しておばあちゃんに委ねてみようと決めていた。
それから2年。一度もおばあちゃんに会わないまま、おばあちゃんが心臓発作で倒れたと知らされた―。

自給自足に近い、自然の中でのおばあちゃんの暮らしは、生きにくい世の中に疲れ立ち止まってしまったまいの心と身体を健康な状態に目覚めさせてくれます。木々を抜ける風や生き生きとした植物達の存在、降り注ぐ太陽の光を感じる描写に、まいと一緒に目覚め浄化されていくように感じました。おばあちゃんが教えてくれる数々の事は何も特別な事ではなく、全ての人が健全に生きるための道しるべなのではないかと思います。自分で道を決め、自分の力で歩き、転んでも迷っても自分の力で進み続ける事。情報が先行し乱れ飛ぶ現代で、何が自分にとって価値がある事なのかを見極め実践するのはなかなか難しい事ですが、惑わされずにそれを実行できる強い心を持ちたいと思いました。
亡くなったおばあちゃんがまいに残した伝言をまいが見つけた場面に、おばあちゃんのまいに対する深い愛情と、茶目っ気たっぷりの可愛らしさに泣き笑いしてしまいました。

自分で考え自分で決める事は、自分の人生に責任を持つ事であり、自分を含め大切な人達を幸せにする手掛かりなんだと感じました。


西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

  • 作者: 梨木 香歩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 文庫



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コメント 2

ちろり

先日はご訪問をありがとうございました^^
また、nice!とコメントまでいただいてしまって…。
お礼が遅くなりまして、申し訳ございません。

西の魔女が死んだ、は持っているのですけれど、
積み本となってしまっています(汗)
今度、引っぱり出して読んでみようと思います^^
by ちろり (2008-06-29 20:51) 

リュカ

ちろりさん、こんばんは^^
ご訪問ありがとうございます^^

とても素敵な作品でしたよ^^是非読んでみて下さい^^
私も積み本たくさんです^^;
by リュカ (2008-06-30 23:22) 

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