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映画『僕だけがいない街』 [映画:劇場]

先日、藤原達也さん主演の映画『僕だけがいない街』を観てきました。

ピザ屋でアルバイトする売れない漫画家の藤沼悟。彼は、事件や事故に遭遇すると、その原因が発生する直前の時点に時間が巻き戻る不思議な能力を持っていた。その事件や事故を防ぐまでリバイバルは繰り返される。
ある日、悟はリバイバルにより子供を交通事故から救った結果自分が事故に遭ってしまう。他人と距離を置いて生きてきた悟だが、病院に付き添ってくれたバイト仲間の片桐愛梨の天真爛漫な振る舞いと真っ直ぐな言葉に少しずつ心を開いていく。数日後、悟が再びリバイバルに遭遇した時、一緒にいた母・佐知子が何かに気づく。しかしその直後、佐知子は何者かに殺害されてしまう。ベランダに潜んでいた不審人物を追う中で、自分が容疑者になってしまった悟。彼を匿う愛梨までもが何者かに狙われ、悟は殺人の容疑で逮捕されてしまう。すると再びリバイバルが起こり、1988年の小学生時代に戻ってしまう。それは、同級生の雛月加代が被害者となった連続誘拐殺人事件が起こる直前だった。大人の記憶と意識を持ったまま11歳に戻った悟は、全ての鍵はこの事件にあると確信し、雛月を守ってみせると決意する悟だったが……。

及川光博さん目当てで観に行ったんですが、大変満足です!
この作品の一番の見所は小学生時代ではないかと思います。母親から虐待を受けクラスから孤立していた加代を、母親からも殺人犯からも守ろうと奔走する小さな悟の手に、観ているこちらの手にも力が入りました。少しずつ悟に心を開いていく加代の表情にも惹きつけられます。中でも、悟の家で朝食を食べるシーンで、ウィンナーを食べながら「美味しい……」と涙を流すシーンに涙腺が緩みました。何度も描写される繋いだ2人の小さな手が微笑ましいです。
加代を救う事に一度は失敗し、二度目のリバイバルが起きるのですが、「今度こそ失敗しない」と小さな拳を握る悟に、そして新たな協力者であるクラスメイトの小林賢也との友情に胸が熱くなります。悟と加代の誕生日会の後、悟は堅也と共に加代を誘拐し母親からも殺人犯からも守り抜き、担任教師の八代の助力もあり無事に加代を救う事が出来たのですが、その結果未来は変わり、殺人容疑をかけられた自分を信じてくれて、守りたい存在になっていた愛梨とは出逢わない事になってしまいます。18年前から戻り、街の中を走る愛梨はすれ違った悟を知りません。走り去っていく愛梨を見つめる悟の表情が切ないです。その後偶然、悟が逮捕された鉄橋下で再会し想いを語る悟ですが、悟を知らない愛梨には伝わらない。過去を変え惨劇を阻止してめでたしめでたしと単純には終わらない物語の深さに感嘆しました。

18年前の事件の真犯人、そして母と愛梨を襲い悟に濡れ衣を着せた犯人は誰なのか。
以下は重大なネタバレになりますので続きへ畳みます。

及川光博さんが出演されていると知った後で漫画原作だという事を知りました。漫画版と映画版ではラストが異なるようなので、漫画版も読んでみたいと思います。
原作ものの映像化は原作を知らずに観る方が楽しめそうですね。

映画『僕だけがいない街』公式サイト



僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース)

僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース)

  • 作者: 三部 けい
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: コミック


全ての事件の始まりである連続誘拐殺人事件。犯人とされる人物は逮捕されていて事件は終わったと思われていたのですが、悟はその人物を慕っていて「あの人は犯人じゃない!」と声を上げるも届かず、状況証拠を揃えられたその人物は有罪が確定してしまいます。それから18年。悟にリバイバルが起きた時、佐知子がそれに気付いて事件を防いだのですが、それは18年前の事件と繋がっていて、その事に気付いた彼女は真犯人に殺されてしまいます。
真犯人は誰なのか。小学生の悟が気付くより少し前、ある人物のある台詞にふっと違和感を抱きました。台詞自体は悟の言葉を受けての自然なものでおかしなところはないのですが、その声音や表情に何かぞっとするものを感じ、そしてその直前に起きていた不審な出来事を思い返し、もしかしてこの人……?と思い始めた頃、悟も信じがたい情報を耳にします。それは、味方だと思っていた人物の嘘。不信感を抱いた悟は新たなターゲットになりそうな少女を追いかけた先で、犯人の罠にはまってしまいました。「嘘だよね!?」と涙ながらに問い詰める悟に、「君はすごいね、この僕をここまで追い詰めるなんて」と笑ったのは、悟に加代も悟と同じ誕生日だという事を教えたりして常に悟と同じ目線で話をしていた担任教師、八代でした。「ゲームオーバーだよ」と悟を橋から突き落とした八代の暗い笑みに思わず惹きつけられてしまいました。及川光博さんのこういう役が観たかったので大変満足です。
現在に戻った悟は今も友人関係が続く堅也の力を借り、八代の現在を追います。そして佐知子が阻止した事件を今度は自らが阻止し、八代と対峙します。真意を質し責める悟に対し、「綺麗事だよ」「君は本当の孤独を知らない」と暗い目で語る八代。その歪み切った正義と価値観の奥に垣間見える絶望の闇に、彼をここまでにしたものは何だったのだろうと想像を巡らせてしまいます。そして八代の凶刃に倒れた悟。過去をやり直し守りたいものを全て守り切った代償の大きさに胸が痛みます。それでも、変更された現在で漫画家として成功している悟が描いた作品が、悟と出逢わなかった愛梨を始めたくさんの人に愛されていて、作中のヒーローの言葉がそのまま悟の想いとなって藤沼悟を知る人達の中で生きている、悲劇だけに終わらないラストシーンに心揺さぶられました。

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