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演劇集団キャラメルボックスサマーツアープレミアム『涙を数える』 [観劇]

演劇集団キャラメルボックスのサマーツアー『TRUTH』とプレミアム公演『涙を数える』、8月10日の回を観てきました。
まずは『涙を数える』から。

安政6年(1859年)9月、上田藩士・長谷川鏡吾は21歳、8歳の時、父が公金横領の罪で切腹。以来、母・淑江と二人で暮らしてきた。
ある日、幼なじみの舟橋明一郎が父・舟橋貞蔵を斬って、江戸へ逃亡。鏡吾は藩の命令で、目付の南条朔之助とともに、江戸へ向かう。江戸藩邸に着いた二人は、世話役の大佛聞多とともに、明一郎を探す。
鏡吾は、明一郎の妹・樹雨から、兄を助けてくれと頼まれていた。もちろん、鏡吾も助けたかった。が、南条は、明一郎が抵抗した場合、問答無用で斬ると言う、南条は上田藩随一の剣士で、明一郎はもちろん、鏡吾にも歯が立たない腕前だった……。
(パンフレット「TALK&PHOTOBOOK」より)

この作品はキャラメルボックスの人気作品『TRUTH』のスピンオフ作品となっています。が、こちら単独で観ても充分に楽しめます。

まず、主役ではないけれど抜群の存在感を放っていた南条のオーラに惹きつけられました。
舞台上に登場し状況を話し始めた時から、「この人の目的はそれだけじゃないだろう」と感じさせるラスボス感、敵役ですが言葉の端々や、飄々とした性格の聞多とのやり取りから根は生真面目で堅物な人なのだろうと感じさせる魅力的な人物でした。殺陣でも「この人強い!」というのが、演劇も剣術も素人の私が観てもはっきり伝わってきてかっこよかったです。

主人公・鏡吾と友人の明一郎、転落していく鏡吾の人生に対し、順風満帆な明一郎の生き様はそれまでの友人関係に暗い影を落とします。明一郎の明るさと鏡吾へ示す優しさは彼を苦しめ、一度は友人の縁を切ると決意させました。職に就けず日々の暮らしにも事欠く鏡吾にとって、勘定方の仕事を投げ出して江戸へ出奔し「国を共に変えよう!」と熱く語る明一郎は、共に生きるには強すぎる光だったのだと思います。
そして後半、明らかになる鏡吾の父の死の真相と明一郎が父を惨殺した理由に、若い鏡吾や明一郎にはどうにもできなかった運命に胸が詰まります。
逆だったかもしれない2人の人生、そして家族を守る為にそれぞれの道を選んだ彼らの父。明一郎の父の「仕方が無かったんだ」という言葉の悲痛さが心に沁みます。それを聞いた明一郎は怒るのですが、やっぱりどうしようもなく仕方のなかった事なのだと思うと切ないです。

南条と共に明一郎を追いながらも、事件の真相を知った鏡吾は彼を逃がすと決めるのですが、南条に見つかり追い詰められてしまいます。斬り合わねばならなくなった鏡吾と明一郎の本気の戦いぶりに胸が締め付けられました。そして南条との戦い、圧倒的な力の差、それでも友を救おうと立ち向かう姿に惹きつけられます。
救えなかった友、晴らせなかった父の汚名、それでもそれらを抱えて生きると決めいつか父の汚名を晴らすと誓った鏡吾の心は、(少なくともこの作品の時点では)真っ直ぐだったと思います。一心不乱に木刀を振るう鏡吾の背に呼び掛け手を振る明一郎。彼の声は鏡吾には届かなかったのでしょうか。「友はいらない。生涯、友は明一郎ただ一人」と語る鏡吾。ここから9年後が『TRUTH』の舞台なのですが、9年の間に何があったのか(『TRUTH』が先にあったので仕方のない事なんでしょうが)、彼には幸せになって欲しかったのに、と悲しくなりました。


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