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ロマン・デュリス主演『ルパン』 [映画:DVD]

今更感たっぷりですが、明けましておめでとうございます。
昨年のご愛顧、ありがとうございました。本年もよろしくお願い致します。

2004年にアルセーヌ・ルパンの生誕100周年を記念して作成された作品です。

1884年、叔父スービーズ公爵の屋敷に暮らす少年アルセーヌ・ルパン。
ある日、彼は泥棒である父の指図で公爵夫人が所有するマリー・アントワネットの首飾りを盗み出し、父に手渡す。父は仲間とともに逃げ出すが翌朝死体となって発見され、アルセーヌと母は館を追い出されてしまう。
やがて、20歳となり父の盗みの才能を受け継いだアルセーヌは怪盗として活躍するが、謎めいたカリオストロ伯爵夫人を助けたことからフランス王家の隠された財宝を巡る争いに巻き込まれていく。
命懸けの死闘、華麗なる逃走劇、父との運命のドラマ、次々と現れる怪しい人物たち、そして従姉妹クラリスと稀代の悪女カリオストロ伯爵夫人との激しくも哀しい三角関係も絡み合って、謎は更に深まっていく……。

モーリス・ルブランのルパン作品原作、『怪盗紳士ルパン』(短編集)『カリオストロ伯爵夫人』『813』『奇岩城』などからエピソードが抜粋され構成されています。歴史的ロマンありラブロマンスあり、アクションも満載で、ルパンの少年時代から壮年に差し掛かるまでの冒険譚が描かれています。
ルパンを演じたのはフランスの若手俳優ロマン・デュリス。最初観た時には私のイメージとちょっと違っていたんですが、ワイルドでセクシー、それでいて優雅でスマートな立ち振る舞い、時折見せる悲しげな眼差しにどんどん惹きつけられていきました。貴婦人たちが集まるパーティでの、鮮やかでさり気ない盗みのテクニックはルパンファンなら必見です。
そして、ルパンの生涯の敵とも言えるカリオストロ伯爵夫人・ジョセフィーヌ。「100年生きている魔女」と言われる美しく謎めいた存在の彼女はルパンを惹きつけます。ジョセフィーヌを演じたクリスティン・スコット・トーマスの捉えどころの無い、冷たい微笑が魅力的でした。
共和制を打倒しオルレアン公爵を王座に就けようと企み、フランス王家の隠し財宝を狙うスービーズ男爵(クラリスの父)達。彼らの会合が行われる城館へ忍び込んだルパンは、そこで王家の財宝を狙って捕われ男爵達から死刑を告げられたジョセフィーヌを秘かに救出します。美しいジョセフィーヌと惹かれ合い、王家の隠し財宝にも興味を惹かれたルパンは、ルパンの子を宿しているクラリスから離れジョセフィーヌと行動を共にします。しかしこのジョセフィーヌ、目的を果たすためなら殺人も厭わない根っからの悪党。ルパンに囁く愛も本心なのかどうか計れません。男爵一味とのフランス王家の財宝争奪戦、ルパンとジョセフィーヌ、クラリスの関係、そして父・テオフラストの死の真相。多少詰め込みすぎの感はありますが、誰が本当の敵なのか? めまぐるしく変わる状況に惹きこまれ片時も目を離せませんでした。
衝撃的だったのはテオフラストの死に隠された真相です。ネタバレになるので詳細は書きませんが、冒頭の少年時代のルパンと父の会話が思わぬ伏線になっていて、父の死を知った幼いルパンの衝撃と、真相を知った青年ルパンのショックを思うと胸が痛みます。「顔の潰された死体」が発見されたら、その身元は疑ってかからなくてはいけないというミステリーの初歩を改めて実感しました。

結局、ジョセフィーヌと決別したルパンはクラリスの元へ戻ります。息子が生まれ、不安げなクラリスをよそに怪盗稼業を続けるルパン。しかし幸せな親子3人の暮らしは、ジョセフィーヌによって壊されてしまいます。息子のジャンは攫われ、クラリスは……。
青年になったルパンと再会し彼の怪盗稼業を知ったクラリスは、スービーズ公爵家の武術講師の職へ口添えし、怪盗稼業から足を洗う事を願いながら「あなたの生涯唯一の友」と一途にルパンを愛し支え続けた彼女のあまりに報われない人生が悲しいです。

それから時が経ち、ルパンはジョセフィーヌと共にいる息子・ジャンに偶然出会います。別れた当時とまるで変わらないジョセフィーヌは本当に魔女のようで(20年位は経過しているはず)ぞっとします。オーストリア皇帝の訪仏に沸く街で、ジョセフィーヌとジャンの企みを阻止しようとしたルパンですが……。
ラストは続編がありそうな雰囲気で終わってしまいます。ジャンとルパンの親子対決や、悪の華ジョセフィーヌとの決着がどうなるのか、気になって仕方ありません。

原作でもルパンは幸せを掴みかけては壊れてしまう人生を歩んでいます。怪盗を生業とする彼の因果なのかもしれません。
そんな悲運とそれに立ち向かっていくルパンの姿はとても魅力的です。
この作品は爽快な冒険活劇を期待すると肩透かしを食らうと思います。大人向けのシリアスで悲哀の漂うドラマにじっくりと浸って観て頂きたい作品です。


ルパン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川映画
  • メディア: DVD



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ミナモ

ものすごく遅くなりましたが…明けましておめでとうございます。
昨年はお世話になりました。
リュカさんにオススメ頂いた『ジュリエットの悲鳴』が昨年内に読み切れなかったのが心残りです…あと半分なんです(汗
短編なのでゆっくり楽しもうと思ったらもう新年…ゆっくりしすぎました(滝汗)
そんなマイペースな私ですが、本年も宜しくお願いいたしますっ_(._.)_
by ミナモ (2011-01-10 22:32) 

駅馬車

少年期から壮年期まで一気にですか?
それは....デビルマン同様に詰め込み過ぎかも(^^;
でも、スピーディに話が進めば何とかなるのかしら?
人間関係の理解だけでも時間が足りなさそう。

カリオストロやらクラリスっていうと、もう1つのルパンの方が先に来ちゃうね(^^;
文学から遠ざかっている証拠かしら(^^;

今年もよろしくお願いします(^^)
by 駅馬車 (2011-01-14 16:15) 

リュカ

レス遅くなりましたm(_ _)m

>ミナモさん
こちらこそお世話になりました^^今年もよろしくお願いします♪
『ジュリエットの悲鳴』感想聞かせて下さいね^^
今年も素敵な本との出会いがたくさんありますように☆

>駅馬車さん
そうなんです^^;
青年時代をメインに少年時代から息子が成人するくらいまでの年月を描いてます。詰め込みすぎでちょっと人間関係の理解に時間がかかりました^^;
2部作くらいにすれば良かったのになぁなんて思います。

日本では三世の方がメジャーですしね^^;
『カリオストロの城』は本家の『緑の目の令嬢』と『カリオストロ伯爵夫人』がモチーフになってるようです。

こちらこそ、今年もよろしくお願いします♪

by リュカ (2011-01-17 13:24) 

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