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小説『私が彼を殺した』 東野圭吾 [小説]

『どちらかが彼女を殺した』に続く、本当の犯人当て推理小説第2弾です。

新進気鋭の詩人・神林美和子は、作家であり脚本家でもある穂高誠と婚約、結婚に向けての準備を進めていた。
だが式の前日、穂高の家に美和子と兄の貴弘、穂高のマネージャー・駿河直之、美和子の担当編集者・雪笹香織が集まっていた時、庭に穂高の以前の恋人・浪岡準子が現れる。純白のワンピースに身を包み虚ろな目をした準子は、駿河に宥められその場を立ち去る。美和子が席を外していた間の出来事だった。後に準子は穂高の家の庭で自殺を遂げる。準子の遺体を、彼女の自宅へ運ぶと言い出した穂高を責める駿河に「自分には関係ない」と言い切る。
何も知らないまま美和子は式当日を迎えたが、バージンロードに姿を現した穂高は苦悶の表情を浮かべ倒れそのまま息を引きとった。
準子に惹かれ、穂高に弄ばれる準子を前に彼女と穂高を引き合わせた事を激しく後悔していた駿河。かつて穂高の人間性を知らず彼に惹かれていた事を恥じ、妹のように大事な美和子を傷付けたくないと強く思う香織。そして幼い頃両親を亡くし、唯一の肉親である美和子と複雑な絆と愛情で結ばれた貴弘も穂高に強い不信感と憎しみを抱く。
事件を担当した加賀恭一郎刑事は、準子が死んだ場所は彼女の自宅ではないと見抜く。準子が自殺に使った毒物と穂高殺害に使われた毒物が同じものであると判明し捜査を進めていくのだが……。

前作『どちらかが彼女を殺した』では、基本的に兄の康正の視点で物語が進んでいきましが、今作では駿河・香織・貴弘それぞれ3人の視点で物語が進んでいきます。その中で駿河と香織は「自分が殺してやった」と告げていて、貴弘も穂高の人間性を知り殺意や憎悪を顕わにしています。
そしてやっかいなのは、前作は康正の独自捜査という形で謎解きが進んでいたのに対し、今作は3人の回想で話が進んでいく、と言う点です。康正の捜査で判明した事は読者にも事実として提示されますが、3人の回想の中には嘘が含まれている可能性がある、知っている事を語っていない可能性がある、という事で前作よりも更に難易度を上げています。
キーとなるのは準子が作成した毒入りカプセルの数とその行方。それを追いかけ、終盤で加賀刑事が明らかにする事実と結び合わせると、恐らく犯人はこの人、と思われます。
私は初読みではあまり躍起になって謎解きをしようとせず、純粋に物語を楽しむ性質なので、犯人の名が明かされないこの作品は本当に何度読んでも楽しめます。

準子を始め何人もの女性を弄び捨てた穂高。そして作家としても脚本家としても落ちぶれ始めた彼は、売れっ子詩人の美和子を利用しようとしている―救いがたい男です。こう言ってはなんですが、殺されて当然と言えるでしょう。美和子がほぼ最後までこの男を信じ愛しているのが哀れです。



私が彼を殺した (講談社文庫)

私が彼を殺した (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 文庫



nice!(3)  コメント(2) 

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コメント 2

なっち♪

クロスワードのように 所々 隠された真実・・・そして罠w
ぴったりと 空白の欄が埋め尽くされた時の楽しさ^^
推理小説・・いいですよね~♪^^
私も同じで さきさき 読み飛ばしていっちゃうほうです(笑




by なっち♪ (2009-09-28 23:59) 

リュカ

>なっちさん
隠された真実と罠が絡み合って、真相が見えた時の楽しさ♪
推理小説はいいですよねぇ^^
そうそう、謎を解こうと躍起になるよりも、
さくさく読み進めて物語を追うのが楽しいですね^^
by リュカ (2009-10-01 19:05) 

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