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小説『赤い指』 東野圭吾 [小説]

東野さんの"加賀恭一郎シリーズ"第7弾となる長編書き下ろし小説です。

会社で残業をしていた前原昭夫の元に、妻の八重子から電話が入った。「早く帰って来て欲しい」とだけ告げるその声からは、有無を言わせない切羽詰った状況にある事を感じさせた。認知症の母・政恵と以前から彼女を疎んじていた八重子、八重子に溺愛され我が儘放題の中学生の息子・直巳。家庭に安らぎを見出せず全てを投げ出す日々。わざわざ不必要な残業をして会社に残っていた昭夫は、憂鬱な気持ちで家路に向かう。帰宅した前原は、予想だにしない光景に言葉を失う。自宅の庭に投げ出された黒いビニール袋から覗く、白い靴下を履いた、動かない小さな女の子の足。直巳が殺したのだと聞いた昭夫は、反省の色など微塵も見せない直巳に対し何も言えなかった。そして、「直巳の将来と自分達の生活の為」と言う八重子に押し切られるように、少女の遺体を公園の公衆トイレに運び証拠隠滅を図った。
一方、公園の公衆トイレから発見された少女・春日井優菜殺人事件の捜査にあたる事になった捜査一課の松宮修平は、偶然にも従弟である所轄の刑事・加賀恭一郎と組む事になった。松宮が並ならぬ恩義を感じ敬愛する加賀の父・隆正と加賀の冷淡な関係に困惑し憤りすら感じる松宮。
そして捜査の手は前原家に伸びる。昭夫は、最低で邪悪な計画を実行に移した―

あらすじを書いていても、前原家の連中の利己的な言動に腹が立って仕方ありません。
優菜の殺害を昭夫に問い詰められ、「俺は関係ない、何も悪くない」と喚き散らす直巳。八重子は直巳を庇いたて、育児に関与しなかった昭夫を責めます。「小学校からずっといじめられていて、今でも友達がいない」とも。
「だから何?」という憤りでいっぱいです。自分が苦しいからといって、他人を苦しめたり踏みにじるなど到底許される事ではありません。「直巳の将来の為」と遺体を捨て証拠隠滅をしようと言い出す八重子。それを多少の罪悪感を抱きながらも実行する昭夫。更に、捜査の手が伸びてきて昭夫が実行した邪悪な計画―認知症の実母を犯人に仕立て上げる―救いようがありません。
この計画はある計略により破綻するのですが、そこに込められた深い想い、そしてタイトル『赤い指』の意味、明らかにされる真実に胸を打たれました。
加賀刑事が直巳の襟首を掴んで床に投げ転がし、「この馬鹿餓鬼を連行してくれ」と言う言葉に少し胸がスッとしました。

この物語のもう一つの軸である加賀親子の関係。これまでの加賀刑事の作品にも手紙や電話だけではありますが姿を見せ、加賀刑事に力添えをしていた隆正。2人の間には、母の事などでわだかまりはあるもののしっかりとした父子の絆があるように見えました。しかし、今作で病床にある隆正を加賀刑事は一度も見舞おうとはせず、松宮刑事が思い返す限りではわざと顔を合わせないようにしていた加賀親子。一体この冷淡さは何だろうと思って読み進めていると、事件が終わった後それは明らかになりました。
「どういうふうに死を迎えるかは、どう生きてきたかによって決まる。あの人がそういう死に方をするなら、それはすべてあの人の生き様がそうだったから、としか言えない。」
中盤、加賀刑事の隆正への態度に不満を漏らした松宮に、加賀刑事が返した言葉です。この時はその言葉のままに受け止めていたのですが、終盤で明らかになった隆正の想い、そしてそれに対する加賀刑事の気持ちを考えると涙が溢れました。ラストシーンでの、隆正を看ていた看護士・金森登紀子が加賀刑事に向けた言葉が更に涙を誘いました。

家族の在り方、親の愛情の種類、色んなことを考えさせられました。
そして改めて加賀刑事のファンになりました。



赤い指 (講談社文庫)

赤い指 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫



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