SSブログ

小説『殺意は砂糖の右側に』 柄刀一 [小説]

柄刀一さんの連作短編推理です。シリーズ化されており、長編も出ています。

IQ190という頭脳の持ち主・天地龍之介は小笠原諸島で祖父の研究を手伝って暮らしていた。祖父が逝去し、龍之介は従兄の天地光章のもとに身を寄せる。龍之介は光章の助けを借りて、祖父が龍之介の後見人に指名した人物・中畑を探すのだが行く先々で事件に巻き込まれ、龍之介は遭遇した事件の謎を解き明かす―

登場人物達がとにかく魅力的です。研究一筋の少年時代を過ごし、純朴で世間知らずな龍之介。世間知らずの龍之介を支え、語り手役も担う光章。2人のバランスが絶妙で、龍之介の純朴さと光章の平凡さ(良い意味で)に惹きこまれていきます。そして光章が想いを寄せる同僚の長代一美との恋模様もこの物語に明るさを添えています。話数を重ねるごとに少しずつ変化していく2人の関係も魅力の一つです。
起きる事件は陰惨な背景を持っていて、犯人の動機は悪意に満ちた愚かなものがほとんどなのですが、龍之介達3人の人柄が読後感を明るくさわやかなものにしてくれています。この探偵役と犯人側の対比の仕方が上手いなぁと感じました。
事件のトリックには科学の知識が用いられていますが、それほど専門的ではなく解説されて納得の行くものや身近に感じられるものばかりで読みやすいです。理系トリックであまりに専門性が高いと「そのトリックは実行可能なのか?」という判断が出来なかったり、私のような理系音痴にはトリックの内容すら理解出来なかったりしてしまうのですが><
この作品に登場するトリックは日常的なものだったり解説方法も易しくすんなりと脳に入ってきます。
難しい事を難しく語るよりも、難しい事を易しく語る方が難しいと思います。柄刀さんの博識ぶりと書く技術の高さを感じました。

現代日本を舞台にしてシリーズ探偵を書くのは不自然さが出てしまい難しいと思うのですが、それをさらりとやってのけた柄刀さんの力量を感じました。普段ミステリーは読まないという方にもお勧めです。


殺意は砂糖の右側に―痛快本格推理 祥伝社文庫―天才・龍之介がゆく!

殺意は砂糖の右側に―痛快本格推理 祥伝社文庫―天才・龍之介がゆく!

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。