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キャラメルボックス'08サマーツアー『嵐になるまで待って』 [観劇]

キャラメルボックス'08サマーツアー『嵐になるまで待って』、昨日の夜の回を観に行ってきました。私は初めて観るのですが、この作品の上演は4度目だそうで、サスペンス色の強い作品です。

声優を志望する君原ユーリはテレビアニメのオーディションに見事合格した。スタッフや共演者との顔合わせで、中学生でプロの声優として活躍するアベチカコ、主役を務める俳優の高杉、作品の音楽を担当する波多野とその姉、雪絵と出会う。ユーリの声と波多野の声が似ているというディレクター。そして耳の聞こえない雪絵に乱暴を働いた高杉に波多野は「やめろ!」と叫ぶ。その瞬間、ユーリには波多野のもう一つの声が聞こえた。「死んでしまえ!」と。翌日、高杉は収録スタジオに姿を現さなかった。親友の死に波多野が絡んでいると疑う高杉。ユーリにしか聞こえなかった波多野の「死んでしまえ!」という叫び。高杉と連絡が取れないと慌てるスタッフ、ユーリは怯え波多野の前から逃げ出してしまう。その夜、波多野からユーリに電話がかかってくる。イルカのペンダントを拾ったから取りに来てほしいというものだった。そのペンダントは、ユーリが秘かに想いを寄せる元家庭教師・幸吉から貰ったものだった。ユーリが自分を避ける理由を察した波多野は、ユーリの幸吉への想いとコンプレックスである男っぽい声を突いて言い放つ。「君が声を出さなければ、彼は君を愛してくれる。」その直後、ユーリの声は失われた。アニメの収録が始まるまであとわずか。ユーリと幸吉はユーリの声を取り戻すため、精神科医の広瀬教授を訪ねた。ユーリの声は戻るのか。波多野のもう一つの声とは一体何なのか……?

広瀬教授のコントのような一人芝居に涙が出る程笑わせてもらいました。ハイテンションなディレクター達のやり取りや、ユーリの想いをわかってるようでまるでわかっていない幸吉くんのリアクションも楽しいです。

耳の聞こえない雪絵は筆談と手話で会話をしています。発声する台詞が一つも無いにも関わらず、彼女の喜びや悲しみ、苦しみがびしびし伝わってきました。そして波多野姉弟の唯一の家族であるお互いを大事に想う気持ちが、交わされる視線や手話でのやり取りから伝わってきます。それが、この悲劇的な嵐の引き金ともなるのですが……。

以下ネタバレを含みますので続きへ。核心に触れていますのでご注意下さい波多野役・細見大輔さんの、狂気を孕んだ笑い声に鳥肌が立ちました。怖くてたまらない、でもどこか美しくて惹きつけられました。クライマックスで、ユーリと幸吉くんが潜む真っ暗な部屋に、波多野が戻ってきた時の傘を床につく音が耳について離れません。そして自分の行為を雪絵に知られていた事を知り、暴走する波多野を見つめていて「この人、死ぬつもりなんじゃ……?」と思っていたら本当に死んでしまって、衝撃と悲しさとで胸がいっぱいになりました。1日経って少し冷静に思い返すと、「傘で突いただけで人は死ねるんだろうか?」とギモンが沸きましたがA^^;もしかしたら、「姉を苦しめる人間」に自分も含まれてしまっている事に気付いて、「死んでしまえ!」という叫びを自分自身に向けてしまったのかな、と思います。
ユーリに宛てられた雪絵の手紙を聞いて、波多野姉弟は互いの一番近くにいて誰よりも互いを大切に思いながらも、どこかで孤独を抱えていたのかなと感じました。
姉を守る為に力を奮った波多野、弟の行為を知っていながら止めなかった雪絵、同じ力を持つユーリと波多野が出会ってしまった事、全ては誰のせいでもなく、何がいけなかったのでもなく、抗いようもなく降り懸かった正に「嵐」だったのだと思いました。

誰かを大切に想う気持ち、守りたい気持ち、強すぎるその想いが呼び起こした嵐は、多くの人の心に傷を残したけれど、それを乗り越えたユーリ達の姿はとても輝いて見えました。中盤までは嫌な奴だった高杉の、ラストシーンでの穏やかな表情が印象に残っています。波多野やユーリと同じ力を使って幸吉くん達の心を覗こうとしたチカちゃんを止めたユーリは、もう自分の声にコンプレックスを持つ事は無いだろうと感じました。

人を想う純粋な気持ち、コミュニケーションの難しさ、色んな事を伝えてくれる作品です。人気の高い作品だと聞いて納得です!
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